悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
それから、マイケルは私を、私の自室となる部屋に案内した。
割ときれいに整えられた、ぜいたくな調度品の置かれた部屋だった。
「……」
「お気に召しませんでしたか? 本当はヴィンセント王国風の部屋にした方がいいかと思いましたが、にわか知識でそういったことをすると返って恥ずかしいことになるかと、ためらわれまして」
「いえ、もっとこう」
「こう?」
埃だらけで蜘蛛の巣が張っている部屋をあてがわれるのかと。
そう思った私の頭の中は、どうやら読まれていたらしい。
特段何も口に出していないというのに、マイケル第一王子はしばらくわたしを見た後、面白いものを見つけたような顔でにこりと笑った。
「せっかく遠くから来てくださったお嫁さんに、そんなひどいことはしませんよ」
「……」
「さあ、荷物を置いたら、こちらへどうぞ」
そう言うと、マイケル第一王子はせかすようにして私を部屋の外へ促した。
長旅後で、部屋に着いたばかり。
こういうときは、少し休む時間をくれるものじゃないのだろうか。
私は、自分の連れてきた護衛達を見ながら、そんなことを思いつつ、紫色の瞳で隣に立つ金髪碧眼の王子をちらりと見た。
「何か?」
「いえ」
「ふふ」
私の視線を受けた王子は、なんだか嬉しそうにくすくすと微笑んでいる。
「ヴィオレッタ様は、とても素直で可愛らしい方ですね」
どうやら、考えていることがわかりやすいと言われたらしい。
憮然とした気持ちを隠さずに顔をそらすと、隣の王子はなんだかより嬉しそうな顔で笑っていた。
だいたい、私のことを可愛いと言うのは、アイリス姉さまだけの特権なのだ。
姉さましか言う人が居なかっただけでもある。
とにかく、この男は、女たらしだ。
間違いない。
野蛮かどうかはわからないけれども、奔放な人物なのだろう。
要注意である。