悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
私は流石に少し悩んだ。
とんだ登場シーンである。
なんとか王族っぽさを出さねばならない。
とりあえず、ゆっくり出ればいいか。
私は、もったいつけるように、それはそれはゆっくりと馬車から身を現した。
黒いヴェールを頭から被っているので、姿がはっきり見えるわけではないが、身分の高そうな若い女の登場に安心したのだろう、周りから全力でほっとしたような空気が伺えた。
特に、馬車の入り口付近にいる一番目立つ若い男。
アイリス姉様と同じ金髪碧眼の、見目麗しい青年は、ちょっと涙目になりながらこちらを見ていた。
歳の頃は、二十代半ばほどだろうか。
瞳が大きく、顔だけなら女性と見間違うこともありそうな中性的な雰囲気の人だ。
男からも女からも引く手数多だろう。
もしかして、この人が私の相手なんだろうか。気の毒に。
私はとりあえず挨拶を済ませることにし、その場でゆっくりとカーテシーをする。
「ヴィンセント王国からやってまいりました、王国第三王女ヴィオレッタ=フォン=ヴィンセントでございます」
私の挨拶に、ハッとした様子の王子さまは、慌てて口上を述べ始めた。
「ようこそ、ヴィオレッタ第三王女殿下。私はマグネリア王国の第一王子にして王太子を拝命しています、マイケル=ミゼル=マグネリアです。長旅の上、この国までこの国まで来てくださったこと、本当に感謝いたします」
なるほど、これがマグネリア王国の第一王子か。
野蛮というよりは、線が細くて、むしろ野蛮な男に襲われてしまいそうな美しさがあるけれども……夜になると、野蛮なのだろうか?
そんな適当なことを考えているうちに、無骨で野蛮な原始人のはずの第一王子は挨拶を終え、私達は部屋へと案内されることになった。
老いぼれ組は、後ろでやいのやいのと元気にうるさかった。
誰かに怒られてほしい。