私の運命の人
体育館での始業式のあと教室に戻り、案の定席替えのくじ引きをする。
が、なぜか広香が私の隣、橋口くんが広香の前と三人でかたまった。

「仲良しだなー、俺たち」
「なんでまとわりついてくるのよ? もう、少しは離れてよ」
「仕方ないって。俺たち、こういう運命なんだよ」

橋口くんの言葉に、私はピクリと反応する。

「……運命?」
「おっ、なんだ優里。俺に運命感じてんの?」
「運命って、いつどうやって感じるの?」
「だから、今でしょ。今この状況が運命ってやつ。ジャジャジャジャーン!」

パシッと広香が橋口くんの頭をはたき、あまりのテンポの良さに私は感心した。

「すごいね、阿吽の呼吸」
「だろ? 運命で結ばれちゃってるからね」

もう限界とばかりに広香が口を開く。

「気持ち悪いこと言わないでよ。私はイケメンのハイスペック男子と結ばれたいんだからね」
「俺のことか? 照れるな」
「バカ! 脳みそ筋肉の能天気柔道オタクが何言ってんの」
「広香、すごい褒めるな」
「褒めてない! ほら、早くお弁当食べて入学式の準備しないと」

広香に言われて私もカバンからお弁当を取り出す。
三人だけが残る教室で、私は箸を進めながらもぼんやりと考えていた。

「優里、どうかしたの?」
「ああ、うん。運命の人って、どうやったら見つかるのかなって」
「ああ、前にもそんなこと言ってたね。優里、もしかして……後悔してるの?」

声を潜めて訊いてくる広香は、きっと友和先輩のことを言っているのだろう。
私は「違う」と首を振った。

「これから出会う人がもし運命の人なら、どうやって気づくのかなって」
「うーん……。私が思うに、自分の理想の相手が現れたら『この人だ!』ってなるんじゃない?」
「理想の相手か……」

するとご飯を頬張りながら橋口くんが身を乗り出す。

「優里の理想って?」
「そうだな……年上の人」

そう言ってから自分で驚く。
私は年上の人がいいの?
確かに友和先輩も年上と言えば年上だったけれど、今の今まで意識していなかった。

「年上の人が理想なのか? じゃあ俺だな」

はあ?と広香が呆れ顔で橋口くんを見る。

「あんた、ほんとに脳みそ筋肉になっちゃった? 同い年なのに何言ってんの」
「違うんだなー、これが。広香も優里も十七歳だろ? けど俺、十八なんだよ。な? 年上だろ?」
「えっ、知らなかった。橋口、留年してたんだ」
「違うわ! 誕生日が四月二日なんだってば」
「嘘!? 一日早ければ上の学年だったってこと? 初めて見た、年度の変わり目の人」
「やあやあ、初めまして。橋口先輩とお呼びなさい」

笑い合う二人を見ながら、私はまたしても妙な考えにとらわれていた。
なぜ年上の人が理想と答えたのか。
それはやはり、いっくんの影響だろう。

(いつまで子どもの頃の記憶に翻弄されるのよ)

気持ちを切り替えようと顔を上げ、私も二人の会話に笑顔で加わった。
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