私の運命の人
懐かしい顔ぶれ
学校生活にも慣れ、授業がいよいよ本格化すると、今度はいかに生徒たちにわかりやすく教えられるかを日々考えるようになる。
自分なりに資料を作ったり、生徒一人一人のウイークポイントを考えながらアドバイスしたりと、休日も部屋にこもってひたすら机に向かっていた。
夏休みに入ると、顧問として天文部の合宿に同行する。
この時ばかりは教師としてより、一人の天文好きとして大いに楽しんだ。
(懐かしいな、またここに帰って来られて嬉しい)
生徒たちとバーベキューをしたり、プラネタリウムを作成したり、満天の星を眺めたり。
それはまさに自分が教師を目指した理由の一つで、高校時代をもう一度味わっているような幸せな時間だった。
夏休みが明けると、嬉しいニュースが飛び込んでくる。
友和先輩と菜々子先輩が十月に結婚式を挙げるとのこと。
私や広香、橋口くんたち元生徒会役員も、坂井くんたちの学年も、さらには担当教諭だった三十木先生も招かれていた。
当日、私は朝から念入りにメイクをし、髪をヘアアイロンで巻いてからアップにまとめた。
髪飾りやアクセサリーを着けると、淡いパープルのワンピースに着替える。
考えてみれば身内以外の結婚式に呼ばれたのはこれが初めてで、しかも大好きなメンバーに会えると私はわくわくしていた。
「優里、こっちこっち!」
会場となる都内のホテルに着くと、待ち合わせたロビーで広香と橋口くんが手招きする。
「お待たせ。わあ、広香、すっごくきれい」
広香は髪を夜会巻きに結い、ラメ入りの黒のタイトドレスをスタイル良く着こなしていた。
隣に並ぶ橋口くんも、スーツ姿で髪もビシッと整えている。
「なんだか見違えたね。二人とも大人っぽい」
「そう? 優里もすてきだよ。きれいなお姉さんって感じ」
その時後ろから「先輩!」と声をかけられ、振り返ると坂井くんを筆頭に一つ下の生徒会メンバーが近づいて来た。
「おお、みんな美男美女!」
「今日だけは、ですよ。普段は全然変わってません」
「それはもれなく私たちもよ。なんかこう、今日はハロウィンの仮装って気分ね」
「確かに」
笑い合っていると、最後に三十木先生がエントランスを入って来るのが見えた。
「あっ、先生! こっちです」
「皆さん、お久しぶりです。元気でしたか?」
「はい。先生は……やっぱり通常運転ですね」
「ん? 何がですか?」
坂井くんの言わんとすることはわかる。三十木先生だけはいつものままなのだ。
スーツに眼鏡に黒髪で、唯一ネクタイが明るい色でポケットチーフと合せているくらいだろうか。
「いやー、安定の三十路先生だなと思って。じゃあ早速行きましょうか」
皆で連れ立ってエレベーターに乗り、まずは式場のチャペルに向かう。
広香と橋口くんが肩を並べて楽しそうにおしゃべりし、その後ろにいた私はなんとなく三十木先生と並ぶ形になった。
「どうですか? 学校の方は」
「はい、なんとかやってます。夏合宿も楽しかったし、学園祭も大盛り上がりでした。クラスの雰囲気もいいので私も毎日学校に行くのが楽しいです」
「そうですか、それは何よりです」
三十木先生は何度も小さく頷く。
「順調で連絡がない方がいいですが、何かあれば迷わず相談して来てください」
「はい、ありがとうございます。とっても心強いです」
そんなことを話しているとチャペルに到着する。
私たちは一番後ろの席に並んで座った。
時間になると厳粛な雰囲気の中、オルガンの音が鳴り響き、後方の扉から真っ白なタキシード姿の友和先輩が現れた。
(ひゃー、かっこいい!)
まるで芸能人に会ったかのように、私は息を呑んで先輩を見つめながら拍手を送る。
次に純白のウェディングドレスに身を包んだ菜々子先輩が入場してくると、さらに目を見開いて感激した。
(なんて美しいの。うっとりしちゃう)
うつむき加減でゆっくりと父親と共にバージンロードを踏みしめて歩く菜々子先輩を、友和先輩が優しい眼差しで見守っている。
やがて二人は手を取り合い、見つめ合ってから祭壇を上がった。
厳かな式が執り行われ、私はその一つ一つに感動する。
誓いの言葉、指輪の交換、そして誓いのキス……
気づけば止めどなく涙が溢れていて、隣に立つ三十木先生がそっとハンカチを手に握らせてきた。
「え、あの、大丈夫ですから」
「どこがですか? ボロボロ泣いてますよ」
そう言って先生は私の頬を優しくハンカチで押さえた。
「すみません、ありがとうございます」
「いいえ。あなたはいつまでも私の可愛い生徒ですから」
「もう二十三になりましたけど」
「いくつになってもです」
私は恥ずかしさに顔を上げられなくなってうつむく。
早く同じ教師として三十木先生と肩を並べられるようになりたいと思っていたけれど、先生の前ではいつまでもどこか甘えた生徒のままでいさせてもらえたらと願うようになっていた。
自分なりに資料を作ったり、生徒一人一人のウイークポイントを考えながらアドバイスしたりと、休日も部屋にこもってひたすら机に向かっていた。
夏休みに入ると、顧問として天文部の合宿に同行する。
この時ばかりは教師としてより、一人の天文好きとして大いに楽しんだ。
(懐かしいな、またここに帰って来られて嬉しい)
生徒たちとバーベキューをしたり、プラネタリウムを作成したり、満天の星を眺めたり。
それはまさに自分が教師を目指した理由の一つで、高校時代をもう一度味わっているような幸せな時間だった。
夏休みが明けると、嬉しいニュースが飛び込んでくる。
友和先輩と菜々子先輩が十月に結婚式を挙げるとのこと。
私や広香、橋口くんたち元生徒会役員も、坂井くんたちの学年も、さらには担当教諭だった三十木先生も招かれていた。
当日、私は朝から念入りにメイクをし、髪をヘアアイロンで巻いてからアップにまとめた。
髪飾りやアクセサリーを着けると、淡いパープルのワンピースに着替える。
考えてみれば身内以外の結婚式に呼ばれたのはこれが初めてで、しかも大好きなメンバーに会えると私はわくわくしていた。
「優里、こっちこっち!」
会場となる都内のホテルに着くと、待ち合わせたロビーで広香と橋口くんが手招きする。
「お待たせ。わあ、広香、すっごくきれい」
広香は髪を夜会巻きに結い、ラメ入りの黒のタイトドレスをスタイル良く着こなしていた。
隣に並ぶ橋口くんも、スーツ姿で髪もビシッと整えている。
「なんだか見違えたね。二人とも大人っぽい」
「そう? 優里もすてきだよ。きれいなお姉さんって感じ」
その時後ろから「先輩!」と声をかけられ、振り返ると坂井くんを筆頭に一つ下の生徒会メンバーが近づいて来た。
「おお、みんな美男美女!」
「今日だけは、ですよ。普段は全然変わってません」
「それはもれなく私たちもよ。なんかこう、今日はハロウィンの仮装って気分ね」
「確かに」
笑い合っていると、最後に三十木先生がエントランスを入って来るのが見えた。
「あっ、先生! こっちです」
「皆さん、お久しぶりです。元気でしたか?」
「はい。先生は……やっぱり通常運転ですね」
「ん? 何がですか?」
坂井くんの言わんとすることはわかる。三十木先生だけはいつものままなのだ。
スーツに眼鏡に黒髪で、唯一ネクタイが明るい色でポケットチーフと合せているくらいだろうか。
「いやー、安定の三十路先生だなと思って。じゃあ早速行きましょうか」
皆で連れ立ってエレベーターに乗り、まずは式場のチャペルに向かう。
広香と橋口くんが肩を並べて楽しそうにおしゃべりし、その後ろにいた私はなんとなく三十木先生と並ぶ形になった。
「どうですか? 学校の方は」
「はい、なんとかやってます。夏合宿も楽しかったし、学園祭も大盛り上がりでした。クラスの雰囲気もいいので私も毎日学校に行くのが楽しいです」
「そうですか、それは何よりです」
三十木先生は何度も小さく頷く。
「順調で連絡がない方がいいですが、何かあれば迷わず相談して来てください」
「はい、ありがとうございます。とっても心強いです」
そんなことを話しているとチャペルに到着する。
私たちは一番後ろの席に並んで座った。
時間になると厳粛な雰囲気の中、オルガンの音が鳴り響き、後方の扉から真っ白なタキシード姿の友和先輩が現れた。
(ひゃー、かっこいい!)
まるで芸能人に会ったかのように、私は息を呑んで先輩を見つめながら拍手を送る。
次に純白のウェディングドレスに身を包んだ菜々子先輩が入場してくると、さらに目を見開いて感激した。
(なんて美しいの。うっとりしちゃう)
うつむき加減でゆっくりと父親と共にバージンロードを踏みしめて歩く菜々子先輩を、友和先輩が優しい眼差しで見守っている。
やがて二人は手を取り合い、見つめ合ってから祭壇を上がった。
厳かな式が執り行われ、私はその一つ一つに感動する。
誓いの言葉、指輪の交換、そして誓いのキス……
気づけば止めどなく涙が溢れていて、隣に立つ三十木先生がそっとハンカチを手に握らせてきた。
「え、あの、大丈夫ですから」
「どこがですか? ボロボロ泣いてますよ」
そう言って先生は私の頬を優しくハンカチで押さえた。
「すみません、ありがとうございます」
「いいえ。あなたはいつまでも私の可愛い生徒ですから」
「もう二十三になりましたけど」
「いくつになってもです」
私は恥ずかしさに顔を上げられなくなってうつむく。
早く同じ教師として三十木先生と肩を並べられるようになりたいと思っていたけれど、先生の前ではいつまでもどこか甘えた生徒のままでいさせてもらえたらと願うようになっていた。