私の運命の人
思いがけないケガ
「ごちそうさま。本当におごってもらってよかったの?」
カフェを出ると、先生が改めて私に向き直る。
「もちろんです。少しですけどお返しができてよかった」
「そう。じゃあ、遠慮なく。ありがとう」
「どういたしまして」
外に出るとすっかり日は沈み、夕暮れのグラデーションが深い藍色に変わっていく。
幻想的な景色に、私はしばし空に見とれた。
「行きましょうか」
先生に声をかけられて「はい」と歩き出す。
階段の上に差し掛かった時、空をバックに自撮りしていたカップルが後ずさって来て私にドンとぶつかった。
「きゃっ」
高いヒールを履いた右足を挫いた私は、階段を踏み外す。
「危ない」
すかさず先生が腕を伸ばして私を抱き留めてくれた。
その拍子に先生の眼鏡が地面に落ち、さらにはそのカップルの足に当たってカンとどこかに蹴飛ばされてしまった。
「あ、すみませーん」
気まずそうにそう言って、カップルはそそくさと去って行く。
「え、ちょっと!」
呼び止めようとした私に、先生は「いいから、足を見せて」と言ってしゃがんだ。
ゆっくり右足を下ろしてみると、ズキンと痛みが走って私は顔をしかめる。
「捻挫だな。歩くといけない」
「いえ、大丈夫です。歩けます」
「だめだ。悪化したらどうする」
先生は立ち上がり、友和先輩たちの結婚式の為にいたホテルの方を見ると、私を一気に抱き上げた。
「えっ、あの、先生?」
「タクシーでうちまで送る」
「下ろしてください。歩けますから」
「仕事に行けなくなってもいいの?」
うっ……と私は言葉に詰まる。
「いいから大人しくしてて。暴れると重い」
「あ、ごめんなさい」
私は少しでも軽くなればと、先生の首に両腕を回してしがみついた。
「急にいい子になったな」
先生は頬を緩めると私を抱いたまま歩道を進み、ホテルのロータリーに停まっていたタクシーに乗り込む。
「えっと、住所は?」
私が運転手さんに住所を伝えると、ドアが閉まってタクシーが走り出した。
「すみません、送っていただいて。またご迷惑をかけてしまいました」
「謝らないで。君は何も悪くないんだから」
「ですが、前回のお礼にとカフェにお誘いしたのに、またこんなことに……」
「いいから。それより痛みは?」
「ジーンとした感覚はありますけど、そんなに痛くはないです。動かすとズキッとします」
「骨折はしてないな。けど、とにかく安静に。動かしたらだめだ。大人しくしてて」
「はい」
私は言われた通りにじっとする。
そのうちにタクシーの揺れと披露宴で飲んだお酒、カフェでお腹がいっぱいになったこともあって眠気に襲われた。
うとうとしていると、先生が手を伸ばして私の頭を自分の肩にもたれさせる。
「あの……」
「いいから、じっとして」
先生は私の頭を抱き寄せた手を離さず、仕方なく私は力を抜く。
そしてそのままスーッと先生の肩にもたれて寝入ってしまった。
カフェを出ると、先生が改めて私に向き直る。
「もちろんです。少しですけどお返しができてよかった」
「そう。じゃあ、遠慮なく。ありがとう」
「どういたしまして」
外に出るとすっかり日は沈み、夕暮れのグラデーションが深い藍色に変わっていく。
幻想的な景色に、私はしばし空に見とれた。
「行きましょうか」
先生に声をかけられて「はい」と歩き出す。
階段の上に差し掛かった時、空をバックに自撮りしていたカップルが後ずさって来て私にドンとぶつかった。
「きゃっ」
高いヒールを履いた右足を挫いた私は、階段を踏み外す。
「危ない」
すかさず先生が腕を伸ばして私を抱き留めてくれた。
その拍子に先生の眼鏡が地面に落ち、さらにはそのカップルの足に当たってカンとどこかに蹴飛ばされてしまった。
「あ、すみませーん」
気まずそうにそう言って、カップルはそそくさと去って行く。
「え、ちょっと!」
呼び止めようとした私に、先生は「いいから、足を見せて」と言ってしゃがんだ。
ゆっくり右足を下ろしてみると、ズキンと痛みが走って私は顔をしかめる。
「捻挫だな。歩くといけない」
「いえ、大丈夫です。歩けます」
「だめだ。悪化したらどうする」
先生は立ち上がり、友和先輩たちの結婚式の為にいたホテルの方を見ると、私を一気に抱き上げた。
「えっ、あの、先生?」
「タクシーでうちまで送る」
「下ろしてください。歩けますから」
「仕事に行けなくなってもいいの?」
うっ……と私は言葉に詰まる。
「いいから大人しくしてて。暴れると重い」
「あ、ごめんなさい」
私は少しでも軽くなればと、先生の首に両腕を回してしがみついた。
「急にいい子になったな」
先生は頬を緩めると私を抱いたまま歩道を進み、ホテルのロータリーに停まっていたタクシーに乗り込む。
「えっと、住所は?」
私が運転手さんに住所を伝えると、ドアが閉まってタクシーが走り出した。
「すみません、送っていただいて。またご迷惑をかけてしまいました」
「謝らないで。君は何も悪くないんだから」
「ですが、前回のお礼にとカフェにお誘いしたのに、またこんなことに……」
「いいから。それより痛みは?」
「ジーンとした感覚はありますけど、そんなに痛くはないです。動かすとズキッとします」
「骨折はしてないな。けど、とにかく安静に。動かしたらだめだ。大人しくしてて」
「はい」
私は言われた通りにじっとする。
そのうちにタクシーの揺れと披露宴で飲んだお酒、カフェでお腹がいっぱいになったこともあって眠気に襲われた。
うとうとしていると、先生が手を伸ばして私の頭を自分の肩にもたれさせる。
「あの……」
「いいから、じっとして」
先生は私の頭を抱き寄せた手を離さず、仕方なく私は力を抜く。
そしてそのままスーッと先生の肩にもたれて寝入ってしまった。