私の運命の人
厳かな弦楽部の演奏の中を、卒業生が入場する。
凛々しく堂々とした先輩たちの姿に、後方の壁際に控えていた私は早くも涙する。
そして卒業証書の授与。

「柳田 友和」
「はい」

生徒会長だった友和先輩や、副会長だった菜々子先輩、お世話になったたくさんの人の最後の雄姿を目に焼きつけた。
送辞は新生徒会長の橋口くん、答辞は旧生徒会長だった友和先輩によって述べられ、私は大きなバトンを受け取ったような気持ちになる。
様々なことが脳裏に蘇り、いつも明るく優しかった友和先輩の顔が何度も思い浮かんだ。
卒業式はあっという間に終わり、私は友和先輩に気持ちを打ち明けないままお別れした。

「優里、本当に言わなくてもよかったの?」
「うん、いいの」

何か言いたそうな広香に頷いてみせる。
もし先輩が運命の人なら、きっと告白のチャンスもあっただろう。
昨日だって、間違えて三十木先生に声をかけたりせず、ちゃんと先輩に話せていただろう。
でも私と先輩はそうならなかった。
それこそが答えだと思えた。
先輩は私の運命の人ではないのだと。

「たぶんね、どうやっても私と先輩は結ばれないと思うんだ」
「そんな……。何もやってないうちから決めつけるの?」
「そう言われればそうだけど、私の中では精いっぱいやったつもり。昨日もそうだし、これまでも何度か声をかけようとしたり視線を送ってみたり。でもそんな流れにはならなかった。つまりは先輩と後輩の関係止まりなんだと思う。あと、これが一番の理由だと思うけど……」
「うん、何?」

身を乗り出す広香に、私は噛みしめるように口を開く。

「私、そこまでがむしゃらに先輩のことを好きではなかったんだと思う。上手くいけばつき合えるかなって程度。だからね、上手くいかなくて当然。そんな中途半端な気持ちで告白するなんて失礼なこと、しなくてよかった」
「優里……」

少し目尻に浮かんだ涙を指先で拭って、私は広香になんとか笑ってみせる。

「難しいね、恋愛って。神様が『この人があなたの運命の人よ』って教えてくれたらいいのにね」
「確かに。じゃあ占いとか行ってみる?」
「ううん、行かない」

ガクッと広香は肩を落とした。

「なんでよ?」
「そんな簡単に告げられたら、あなたに何がわかるのって思っちゃう」
「さっきは神様が教えてくれたらいいのにって言ったじゃない」
「神様ならお金払わなくても教えてくれそうだもん。占いはお金取るでしょ?」

広香はさらにガクッと肩を落とす。

「結局、金かーい!」
「そうかも。恋よりお金! 好きな服買って美味しいもの食べられるもん。お金は私を裏切らない」
「まったく。優里に恋はまだ早い」
「あはは! 確かに」

私は広香と肩を並べて明るく駅へと向かった。
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