私の運命の人
(さてと。どうやって先生に口を割らせようか)

昼休みになるとお弁当を広げ、私は悪代官のようにニヤリとほくそ笑む。

(絶対に認めさせてみせる!)

それに先生がいっくんだとわかった今、色々なことが腑に落ちたのだ。
私を必要以上に心配したのも、五歳の頃の優里ちゃんだと思っているから。
つまり、先生は私があの時の優里ちゃんだと気づいていたのだ。
タクシーの中で私が「いっくん」と呟いた時、ピクッとしていたから間違いない。
それなのに黙っていたとは。
それもしっかり追及してみせよう。

「あの、三嶋先生? なんか悪い顔してますけど?」

生徒たちが恐る恐る訊いてくる。

「うん? そんなことないですよー。さあ、今日も美味しくいただきましょう」

私はにこにこと笑顔でお弁当を頬張った。
放課後になると時計を見ながら手際良く仕事を終わらせ、帰る支度をする。
スマートフォンに【着いたよ】と三十木先生からメッセージが届くと、ほかの先生方に挨拶をしてから職員室を出た。

「先生!」

駐車場に行き、車の横に佇んでいた先生に笑顔で声をかける。
ただの先生ではない、あのいっくんなのだと思うと嬉しくて仕方なかった。

「お疲れ様です。何かいいことでもありましたか?」
「はい、とってもいいことが」
「そうなんですね、それはよかった。どうぞ乗って」
「ありがとうございます」

車を走らせながら先生は「そう言えば」と切り出す。

「お弁当、美味しかったです。ありがとう」
「どういたしまして。せめてものお礼です。先生にはどんなに感謝してもし切れませんから」
「そんな大げさな。僕が勝手にやっているだけですよ?」
「いいえ、ずっと前から先生にはお世話になりっぱなしです」
「高校時代ですか? それも変です。僕は君の担任になったこともありませんし」
「そうですよねえ、ふふふ」

すると先生は朝と同じように、怖々私を横目で見た。

「先生、夕飯ぜひうちで食べていってください。足がまだ本調子ではないので、いてくださると助かります」
「それは、まあ、はい」
「何が食べたいですか? あ、途中スーパーに寄ってもらってもいいですか?」
「……かしこまりました」

先生は居心地悪そうにしながら、私の言う通りに頷いてくれた。
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