私の運命の人
エピローグ
それから一年半後。
私が初めて担任を受け持った学年がいよいよ大学受験に突入する。
私は毎日生徒たちの入試日程を見ながら、心の中でがんばれ!とエールを送った。
既に授業はなく自由登校の為、職員室での私の仕事は比較的のんびりしている。
そして私は今妊娠六ヶ月に入っていた。
三月の卒業式で初めての担当生徒を送り出したあと、産休に入ることになっている。
「きんちゃーん、ごはんですよ」
朝、出勤の準備を済ませると、私は水槽の中にパラパラとエサをまいた。
気持ち良さそうに泳いでいる金魚は、もうすぐ二歳になる和金のきんちゃん。
「わっくんみたいに大きくなーれ」
その時、玄関からいっくんの声がした。
「優里、そろそろ行くよ」
「はーい」
私はいっくんに返事をすると水槽のフタを閉め、隣に並べてある三枚の写真に目を向ける。
それはスイカを並んで食べている幼い日の私たちと、大きなモミの木の前でバラの花束を抱えていっくんと見つめ合っているプロポーズの時の写真、そしてたくさんの人たちの笑顔に囲まれた結婚式の日の写真だった。
幸せを閉じ込めたその写真たちに、私は「行ってきます」と微笑む。
玄関に行くと、いっくんが優しく手を差し伸べてくれた。
幼い頃と同じように、私は温かいその手をキュッと握って笑いかける。
いっくんの前ではいつだって私は甘えん坊だ。
「優里、足もと気をつけるんだよ」
「はい!」
するといっくんは、ポンポンと私の頭に手をやった。
「いつも可愛いね、ゆりちゃんは」
「ふふっ、ほんと?」
「ああ。いつまでも可愛いよ、僕の優里は」
いっくんは私の頬に優しくキスをしてから玄関を開ける。
「行こうか」
「うん!」
私はいっくんとしっかり手を繋いで、明るい日差しの中を歩き始めた。
すぐ目の前にある大きな背中を見ながら、五歳の私と今の私の心が重なる。
『いっくん、だいすき! ずっとずっと、いっしょにいてね』
(完)
私が初めて担任を受け持った学年がいよいよ大学受験に突入する。
私は毎日生徒たちの入試日程を見ながら、心の中でがんばれ!とエールを送った。
既に授業はなく自由登校の為、職員室での私の仕事は比較的のんびりしている。
そして私は今妊娠六ヶ月に入っていた。
三月の卒業式で初めての担当生徒を送り出したあと、産休に入ることになっている。
「きんちゃーん、ごはんですよ」
朝、出勤の準備を済ませると、私は水槽の中にパラパラとエサをまいた。
気持ち良さそうに泳いでいる金魚は、もうすぐ二歳になる和金のきんちゃん。
「わっくんみたいに大きくなーれ」
その時、玄関からいっくんの声がした。
「優里、そろそろ行くよ」
「はーい」
私はいっくんに返事をすると水槽のフタを閉め、隣に並べてある三枚の写真に目を向ける。
それはスイカを並んで食べている幼い日の私たちと、大きなモミの木の前でバラの花束を抱えていっくんと見つめ合っているプロポーズの時の写真、そしてたくさんの人たちの笑顔に囲まれた結婚式の日の写真だった。
幸せを閉じ込めたその写真たちに、私は「行ってきます」と微笑む。
玄関に行くと、いっくんが優しく手を差し伸べてくれた。
幼い頃と同じように、私は温かいその手をキュッと握って笑いかける。
いっくんの前ではいつだって私は甘えん坊だ。
「優里、足もと気をつけるんだよ」
「はい!」
するといっくんは、ポンポンと私の頭に手をやった。
「いつも可愛いね、ゆりちゃんは」
「ふふっ、ほんと?」
「ああ。いつまでも可愛いよ、僕の優里は」
いっくんは私の頬に優しくキスをしてから玄関を開ける。
「行こうか」
「うん!」
私はいっくんとしっかり手を繋いで、明るい日差しの中を歩き始めた。
すぐ目の前にある大きな背中を見ながら、五歳の私と今の私の心が重なる。
『いっくん、だいすき! ずっとずっと、いっしょにいてね』
(完)


