きみと、どうかしてる。
「ちょっとくらいサービスしてくれてもいいのに。千尋のケチ!」
「だから、ボリューム下げろって」
二人がかりで責められたことが相当気に食わなかったのか、俺の手からコップをふんだくって一気にあおる。
いつものことながら、本当に羨ましい飲みっぷりだな。
同じことをしたら、その一杯でぶっ倒れる自信ある。
「お前さぁ…」
「いいでしょ!あたしのだもん!
ていうかね、電話切った後に気付いたんだけどさ?前回会ったの先週じゃなかった?」
「そう。土曜」
「だよね!?電話したときは、半月以上会ってない気がしてたの!ごめんごめん!
分かってて来てくれるなんて、亜美子ちゃん嬉しいなー!」
さっきまで拗ねた顔をしていたのに、今は満面の笑みで。
機嫌も表情も、コロコロと変わる様は見ていて面白い。
無愛想な俺には無理な技だなと、感心する。
「本気で悪いと思ってんの?」
「ううん、思ってないよ!」
「………」
「あれ?なんか今日機嫌悪い?」
「…別に」
「じゃあその顔は、"来てくれて嬉しい"なーんて可愛いこと言われて照れたから、隠すために不機嫌を装ってるのね!?」
「全く違うし、照れてもない」
「まーまー、いいからいいから。
亜美子さんはねぇ、千尋のそういう、照れ屋さんなところも好きだよ!」
「聞けよ、人の話」
「やだね!聞いたって怒られるだけだもーん!」
遠慮のかけらもなく、好き勝手に話す姿を見ていると、ふと思い出す。
知り合ってすぐの頃は楽しむどころか、どうにか頑張ってラリーを返してるって感じで。いつも余裕が無さそうだったな、とか。
怒らせないように、嫌われないように。
いつも気を張ってたよな、とか。
今では、素振りすら見せないけど。