きみと、どうかしてる。

「おっっっそ!やっときたぁ!!
もうなに?ヒーロー気取りなの!?」

「ヒーロー?」

「そう。ヒーローはいつだって遅れてやってくるでしょ?」

取り上げられたコップが空じゃないことも、取り上げたのは俺だということも。本人は分かっているはずなのに。

さらに大きな声で俺の名前を叫びながら、両腕を回してきて。これでもかと言わんばかりに強く抱きしめられる。

「バカ。こぼしたらどうすんだよ」

「千尋はそんなヘマしないから大丈夫だもん!

あっ、仕事の邪魔してごめんね。
千尋来たし、もう大丈夫だよ!」

俺の体に顔をくっつけたまま、さっきまで話していた店員の隼人(はやと)に声をかけるこいつは。

……もしかしてだけど、ずっとこのままでいるつもりじゃないだろうな?


「亜美子ちゃん、そのままだと千尋くん座れないよ?」

「うん、わかってるよ。
こんな時間にご足労いただいたのに、立たせたままにしておくのは可哀想だよね」

「そっ、」
「一刻も早く座ってもらって、おもてなしすべきだよね?」

「そう。だから、」
「でもさぁ、めちゃくちゃ待ったよ!?いつまでも待つとは言ったけど、本当にめっっちゃくちゃ待ったんだから!!」

「千尋くんにだって用事が、」
「ということで、あと5ふ…10分このままでお願いします!」
 
「増やしてんじゃねーよ。さっさと離せ」

いつまでも力を弱めないから、思いきり両手で頬を挟むと、渋々と言った感じで離れていく。

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