きみと、どうかしてる。
「谷村さーん。たーにーむーらーさーん」
「………」
「……谷村さんって、お前?」
「いるのはわかってるんだよー谷村さーん」
「………」
「返事。しなくていいのかよ」
柱と千尋の間に隠れたまま辺りを見回しても、声は聞こえるのに、本人の姿が見当たらない。
「あー、鬼ごっこじゃなくてかくれんぼ?」
「ちょっ、もう!うるさい!」
「疑ってたわけじゃないけど、お前本当に高校生なんだな」
「静かにして!動かないで!!」
こんな時に限って、空気を読む力を失ったらしい千尋は、話も聞いてくれなければ、口を閉ざす気配もない。
「セーラー服の高校って珍しくね?」
「………」
「それ本物?コスプレじゃないよな?」
「………」
「人の話聞け。ちゃんと見せろよ」
"静かにして"も、"動かないで"も。
どちらも無視して。
どころか、背中に隠れているあたしを視界に入れようとするもんだから、二人でくるくる回るはめになる。
ていうか、"人の話聞け"は、こっちのセリフなんですけど!?
「待って、ほんとに動かないで!隠れらんないでしょ!」
「ただの遊びなんだからいーじゃん」
「遊んでない、追われてるの!
見つかったら困るの!分かるでしょ!?」
「それが本当なら、デカイ声出すのやめた方がいいと思うけど」
「だってそれは!…あっ」
"だってそれは、千尋が言うこと聞いてくれないから"って、言うつもりだったのに。
「やっと見つけた、谷村さん」
「もっ、森下、さん……」
突然視界に現れた森下さんは、まるで鬼の首でも取ったかのようににんまりしていた。