きみと、どうかしてる。
一瞬でも見失ってくれれば、どうにか撒けるはずだから。
最初に見えた角を曲がって、すぐに体を翻して。身を隠そうと駆け寄った先で、
「おっと、」
「わっ!」
自分よりも大きななにかに、勢いよくぶつかってしまった。
声が上がったことから、ぶつかった相手が人であること。
その人に支えてもらったことを理解するのには、時間はかからなかったけど。
「すっ、すみませんでした!
ちょっと急いでて、前見てなくて、」
「いーえ。平気だけど、」
慌てて下げた頭の上から聞こえる、少し笑いを含んだその声は。
それはもう、ものすごく。
めちゃくちゃ聞き覚えのある声で。
顔を上げると、そこにいたのは、やっぱり。
「ち、千尋っ……!?」
「こんなとこで鬼ごっこって。
青春してんなぁ」
「………」
どこをどう見ても、紛れもなくあの千尋で。
街中で出くわしたことなんて、今まで一度もなかったのに。どうしてこんな時に…
驚きと疲れで、少し呆然としてしまったけど。
森下さんの声で我に返って、慌てて千尋の背中に隠れる。