きみと、どうかしてる。

一瞬でも見失ってくれれば、どうにか撒けるはずだから。

最初に見えた角を曲がって、すぐに体を翻して。身を隠そうと駆け寄った先で、

「おっと、」

「わっ!」

自分よりも大きななにかに、勢いよくぶつかってしまった。

声が上がったことから、ぶつかった相手が人であること。

その人に支えてもらったことを理解するのには、時間はかからなかったけど。

「すっ、すみませんでした!
ちょっと急いでて、前見てなくて、」

「いーえ。平気だけど、」

慌てて下げた頭の上から聞こえる、少し笑いを含んだその声は。

それはもう、ものすごく。
めちゃくちゃ聞き覚えのある声で。

顔を上げると、そこにいたのは、やっぱり。


「ち、千尋っ……!?」

「こんなとこで鬼ごっこって。
青春してんなぁ」

「………」

どこをどう見ても、紛れもなくあの千尋で。

街中で出くわしたことなんて、今まで一度もなかったのに。どうしてこんな時に…

驚きと疲れで、少し呆然としてしまったけど。

森下さんの声で我に返って、慌てて千尋の背中に隠れる。

< 36 / 50 >

この作品をシェア

pagetop