きみと、どうかしてる。

「言い訳もできないの?」

「なら、"行かない"って電話してよ!」

いつまでも察しの悪いバカにも分かるように、嫌悪感をそのまま表情に出して。静かに言葉を吐き出す。

「分かった」

「じゃあ、」
「相手には困ってないから。お前もういい」

「え?」

「どうしてもって言うから会ってやったんだけど。なんか勘違いしてない?」

「………」

「お前のことなんてもちろん好きじゃないし、好きになる可能性もない。最初に言ったよな?

面倒事は嫌い、ってことも」

「………」

「それでもいいって言ったの、誰だっけ」

女って生き物は、なんでこうも貪欲なのか。

都合の悪いことだけ自動で忘れられる機能でもついてんの?

「…そっ、そうだよね。ごめんなさい。
今言ったことは取り消すから。ほんとごめ、」
「もう会わない」

「え?」

「連絡先消しといて」

「まっ、待って…、」

「契約不履行ってことで。じゃ」

「待って…まってよ千尋…、きゃっ!」

いつまでも纏わりつく腕を強引に引き剥がして、さっさとこの場を離れようと、ドアノブに手をかけた直後。嗚咽が聞こえ始めた。

その声に一瞬、足を止めてしまったけど。
止めたのは文字通り、一瞬だけで。

逃げるように、足早にその場を去った。

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