婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!

 朝、目を覚ましてもアイツの声はしないし、新しく契約したスマホを見てもアイツからの連絡はない。部屋の前にもいないし、通勤途中にも職場にももちろんいない。

 なんて自由なんだろう!

 これが私にとって、人生で初めて訪れた春だった。

 生活面では少し寂しかったり、失敗してしまったりすることもあったけど、もう二度と実家に戻らなくてもいいと思った。

 色々さしひいても、実家がアイツの家の隣ということが最大の問題だったのだ。

 このまま一生、アイツに見つからずにのんびり暮らしていきたい。

 もちろん貯金は心もとないし、以前のように値段を見ずにすべてをカードで買えるわけでもない。
 だけど、そもそも私は贅沢な暮らしが好きだったわけではなかった。服だって気に入ったものが数枚あれば十分。

 むしろ今まで必要以上に何もかも与えられていたぶん、それらを一気に削ぎ落としてみれば、驚くほど身軽になった気がした。

「もしかして、このまま新しい恋しちゃったりなんて……」

 ひとりきりの部屋でそんなことを呟いてみれば、頬が緩んだ。

 そんな期待を抑えることはできず、私はベッドの上で抱えていたクッションに顔を埋めながら、誰にも邪魔されない自由で明るい未来を思い描いた。

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