海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
念のため、私はそのメールを上司の青木さんにも見せることにした。

「青木さん、少しご相談が」

事情を説明すると、青木さんはメールの画面を確認して頷いた。

「わかった。行ってこい」

「はい」

「明日は休日出勤として申請しておくから。くれぐれも、粗相のないようにな」

「は、はい!」

思わず背筋が伸びる。わかっている。ルイさんが手がけたデザインは、これまで何度も社内で高い評価を受けている。うちの会社にとって、ルイさんはもはや特別な存在だ。そんな人を怒らせてしまったら。もし「もうノスタルジアと仕事をしません」なんて言われたら?考えただけで恐ろしい。会社にとって、とんでもない損失だ。そして、その原因が私だったとしたら……。時透社長に呼び出される。

「君、今日で終わりね」

脳内に、あの綺麗すぎる顔で冷めた目で淡々と告げる社長の姿が浮かんだ。

「……っ」

私はぶんぶんと首を横に振った。嫌だ。クビになるのは困る。だって。

「この仕事、好きなんだもん」

ぽつりと呟く。商品を考えることも。デザイナーさんと一緒に、ひとつの商品を形にしていくことも。何より、完成した商品を店頭で見つけたときの嬉しさが好きだ。それに。

「あの絵を見るために、毎日頑張ってるって言っても過言じゃないし」

二階の休憩スペースに飾られた、あのクラゲの絵。嫌なことがあった日も、あの絵を眺めると不思議と気持ちが落ち着く。私にとって、あの場所はちょっとした心の逃げ場だった。

「よし」

私は小さく気合いを入れて、パソコンへ向き直る。明日は、絶対に失敗しない。ルイさんに失礼のないようにして。ちゃんとコンセプトを伝えて。そして、クビにならないようにする。そんなことを考えながら、私は残っていた仕事を一つずつ片付けていった。
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