海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
時透社長が去っていった途端、張りつめていたオフィスの空気がふっと緩んだ。

「びっくりしましたね……」
「それにしても、やっぱりイケメンだわ。怖いけど」
「本当、素敵。でも、あんなに冷たいと近づけない」

女性社員たちが、さっそく小声で話し始める。さっきまで誰もが息を潜めていたのに、社長がいなくなっただけでこの変わりようだ。

「それより、先輩」

隣から佐々木くんが声をかけてくる。

「仕事、増えちゃいましたけど大丈夫ですか?」

「それは…まあ、仕方ないかな」

私は苦笑する。もう一度コンセプトについてお互いの意図を擦り合わせなければ…デザイナーのルイさんにも修正の意図を伝えなくてはいけない。けれど――。

「そういえば、ルイさんって誰も会ったことないですよね?」

「うん」

「先輩は直接やり取りしたことあるんですか?」

「メールならね」

私はパソコンの画面を見つめる。

「でも……これ、メールでどう伝えようかな」

『社長から、もう一度直してほしいと言われました』

それだけでは、あまりにも曖昧だ。どうして変更する必要があるのか。どこを直してほしいのか。私自身、まだ上手く言葉にできていない。

「どうしよう」

小さく呟きながら、頭を悩ませる。
昼休みが終わる少し前。パソコンに社用メールの受信通知が表示された。差出人の名前を確認して、思わず目を見開く。ルイさん?

「え…?」

慌ててメールを開く。そこに書かれていたのは、短い文章だった。

【提出したデザイン画について、もう一度検討させてください。
明日、十三時より直接お打ち合わせを希望いたします。
下記住所までお越しください。】

その下には、打ち合わせ場所と思われる住所が記されている。

思考が止まった。直接?明日?私が連絡する前に向こうから連絡をくれたのはありがたい。むしろ、こちらとしては願ったり叶ったりだ。でもルイさんって、誰も会ったことがない人だよね?
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