加納欄の冤罪シリーズ33シーズン4
電車が動き出した。

朝の車内は混んでいて、人と人との間にほとんど隙間がない。

あたしはドアの近くに立ち、何気ない顔でスマホを見た。

……どこにいるんだろ。

見回したい。

ものすごく見回したい。

でも、そんなことをしたら囮にならない。

『普通の乗客でいろ』

高遠先輩に何度も言われた言葉を思い出す。

あたしはスマホの画面を見たまま、じっと立っていた。

駅に着くたび、人が降りて、また乗ってくる。

少しずつ、車内の人が増えていく。

誰かの肩が当たる。

鞄が腰にぶつかる。

そのたびに身体が反応しそうになる。

……違う。

まだ違う。

そして、次の駅を出た時だった。

お尻に、何かが触れた。

ん?

あたしの指が止まる。

……来た?

鞄が触れただけ?
< 30 / 52 >

この作品をシェア

pagetop