葉山くんは私の前でだけ忠犬
そっと、指を通すように傷んでキシキシとした髪を撫でてあげれば、満足そうに「あはぁ」と声をもらす葉山くん。

でも、褒めるだけじゃなくて……。


「葉山くん……あの、喧嘩はだめだから、ね」
「わかってるってぇ……でも、今日のはしょーがないんだもんね」


しょうがないって?

どういうこと?


葉山くんを撫でる手を止めると、かがんだ体勢のまま私の顔を覗き込んでくる。

距離が近くて一歩後ろに下がるけど、長い腕が私の腰に巻きつけられてどうにもならない。


「最近、構ってくんないから悪さしちゃったぁ」


葉山くんは目を細めて、にんまり、と笑う。

口角がこれでもかと上がり、切れていた唇の端からまた血がにじんだ。


「は、葉山く……」
「ちゃんとめんどー見なきゃダメじゃん」
「う、うん……でも、テストだったから」
「俺もおんなじじゃん……なんで『飼い主サマ』は一緒にべんきょーする考えにならなかったのかなぁ?」
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