葉山くんは私の前でだけ忠犬
「なんでムリなの?」


そんなの当たり前だよ。

だってモモは犬で、葉山くんは……。


「は、葉山くんは……」
「俺がなに〜?」
「えっと……その……」


口をつぐんでいれば、葉山くんは「ふうん?」と目を細めたまま私から離れた。

相変わらず背中は丸まったままだけど、さっきまで撫でてた頭が遠くへいく。

葉山くんは血がにじんでいた唇の端を乱暴に指で拭い、そのままズボンのポケットに手を突っ込んだ。


「じゃあイイコにしないよ?」
「そ、それはダメだよ……」
「なんでダメなの?」
「だって……すぐ喧嘩するもん」
「俺が喧嘩したらなんでダメなの?」
「……危ないし、痛いでしょ?今も唇の端切れてる」


手だって、殴ってたから腫れてるし。


最初は葉山くんが喧嘩して怖い、それだけだった。

でも今は、それだけじゃない。

怪我してたら痛そうだと思うし、やめてほしいとも思う。危険なことは、しないでほしい。
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