その青は還る 完結
 俺はその夜も適当な女と施設で行為に及んだ。ただ、相手に誘われて来ただけの話で、終わってみれば何の感情もない。

 だいたいの女は連絡先を聞いてきたり、渡してきたりするが、いつも俺はこう言ってる。

「持ってない。お互い同意だっただろ」

 すると相手は途端に嫌な顔を浮かべて、そそくさと着替えて、去り際に「最低」と言ってくるのが決まりだ。

 俺はそうなる前に、施設に入ったら財布を取り出して、すぐに数枚の札をテーブルの上へ置いていた。金で解決したかったわけじゃない。ただ、金を持ってること自体が嫌だった。ちょうどいい理屈だと思った。

 女が出ていったあと、俺はシャワーを浴びて、着替えてから、煙草を口にしたまま、ポケットから携帯を取り出した。

 電源を入れた途端に、並ぶ何件もの着信履歴とメール通知。似たような名前と内容に、ため息しか出なかった。

 それ以上見るでもなく、ポケットに戻して、煙草をくわえたまま、施設を出た。
ここからどこへ行こうか、また飲みにでもいくかと考えて、正面玄関から抜け出した。

 大通りを歩き、繁華街に着いたところで、どこかで見た顔が近づいてきた。

「よぉ。いい店知ってるから、付き合えよ。な」

 こちらの意思など関係なく、相手は強引に肩を引き寄せて、前へと進んでいく。相手はどこかで知り合っただけで、何度かこうして連れられたが、名前もろくに覚えてない。こんなことがあるのは日常茶飯事で、目的が一つしかないのは、俺もよく知っている。

 このあとは高級な店に入り、綺麗な女を侍らせ、高い酒を並べて、社交辞令も並べる。

「いやぁ、すごい売れてるよね、大したもんだよ」

 聞き慣れた言葉は耳障りで仕方なかった。

「儲かってるんでしょ?支払い頼むよぉ?」

 軽い冗談にされても、苛立ちさえ湧いてこない。

「ねー、ミサトちゃん。これ、あ・げ・る」

「えー、なんですかーこれー」

「こいつのCD、めっちゃ売れてるんだってー」

「ふーん……それより……」

 その時も俺は何の感情もなかった。ただ、目の前にある酒やグラスを眺めた。そして、テーブルの端にあるCDがやけに目についた。


 深いため息が出た。早めに切り上げて、家に帰ろうと思い、取り敢えずトイレを探して立った。

「トイレならあっちだぞ」


 その声に軽く頷き、煙草をくわえたまま、トイレへ向かった。
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