名探偵は活躍しない

はじまり

 逢坂財閥の一族の一人である逢坂(おうさか)次郎太(じろうた)。

 彼の名前をネットで検索すれば何千何万件とヒットする。

 知らない人なんて、いない。

 彼は目立つことが大好きで。

 自らすすんでメディアに露出し、自分を売り出し。

 会社を売り出している。


 この時代に、あの昭和の頑固親父が珍しいのか。

 彼はメディアに引っ張りだこだ。


 そんな彼が父だと知れば。

 汚い大人は、私を使って仲よくしようとしてくる。

 逢坂次郎太の一人娘。

 俗にいう私は財閥の娘であって。

 いや、厳密にいえば。

 財閥関係者であって。

 超お金持ちのお嬢様なのだ。


「財閥関係者」と言って突き放すのは。

 逢坂次郎太と私に血の繋がりがないからだ。


 前当主の次男坊だった次郎太は、

 後を継ぐ必要がないので。幼い頃から自由奔放に育ったらしい。

 若い頃は女性関係が派手で。

 とにかく、たっくさんと女性とお付き合いしたとか。

 そのお付き合いした中の一人が私の母親だそうで。

 母が病気で亡くなる寸前、次郎太を呼び出して。「娘を頼む」と言ったとか。

 生涯、独身を決め込んでいる次郎太は。

 ご立派なことに、母との約束を守った。

 多分、母は金銭面でのお世話をしてほしいという意味だったんだろうけど。

 次郎太は私を養子として…娘として迎えてくれたのだ。

 当時、私は3歳。

 いきなり、見知らぬオッサンに「今日からワシがお父さんだ」と言われたら。

 恐怖で絶叫するに決まっているじゃない?


 ただ、私はその瞬間から。

 自分という存在は死んだのだというのを自覚した。

 次郎太に手を引かれ。

 名前が、逢坂(おうさか)まりあになった日から。

 私はお嬢様として、逢坂次郎太の娘として生きていくことが決定していた。
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