嗚呼、愛しのアフロディーテ
──キーンコーンカーンコーン……


ちょうど予鈴のチャイムが鳴り、私たちのやり取りを固唾を飲んで見守っていたマミちゃんが私の手を握る。


「あかり、教室戻るわよ」
「あ、うんっ……」


マミちゃんに引きずられるようにして教室を出るとき、チラッと坂本くんを見れば、あの涼やかな目を釣り上げて鋭い視線をこちらに向けていた。

こちら、というかマミちゃんに向けて……。

その視線の強さに、背筋がゾワっとする。


なんだか、ほんとに坂本くん変わったみたい。

死んでしまうかも、という危うさはなくなったかもしれないけれど、違う意味での何か……怖いものを感じる。


自分の教室に入り、席についてさっき返したハンカチのことを思い出す。


あんな表情で頬ずりをしたり、に……においを嗅ぐような仕草をしたり……少し変?だった。

それにあの表情……。

頬を染めて、目尻が下がって、瞳もとろけたような……どこか甘ったるいような……そんな顔。

どうして私に向けて……そんな顔したんだろう。


考えたところでわからないし、借りていたハンカチを返してしまったから、もう坂本くんと接することはほとんどないだろう。


そう、そのときの私は思っていた──。
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