甘いヒーローの独り占め
10話
「か、彼女さんとかに悪いよ…!」
「…………」
「え!?な、なに!?」
桜子をジーッと真顔で見る智也の視線に気づくと、びっくりした顔を見せる桜子。
智也は肩を落として撫でいた手を離した。
「……」
「え!?え?何?お、怒ってる?」
「…いや…」
「嘘!智くん拗ねるといっつも見てきたもん!」
「…じゃあ、拗ねてるから映画教えて」
歩き出す智也は、ついてこない桜子へ振り返る。
「桜子」
じっと見つめる智也の真っすぐな目が合うと、桜子の足はすくんでしまった。
「…俺は誰ともそんな関係じゃない。彼女はいない」
「嘘だ…あんなにモテてて…いない方がおかしい!」
「……なんでそうなる…。もう何もしないから」
智也がポケットに手を入れる様子を見たら、桜子はゆっくりと足を踏み出して、智也のそばにいった。
夜風が熱くなっている桜子の頬を優しく冷やす。
「ほ、ほんとに…いない…?」
「あぁ。桜子に嘘はつかない」
「……じ、時間…あるよ…」
視線を逸らしながら小さく答える桜子の頭に、智也はポンと手を置いた。
「コンビニで飲み物買う」
「そんなに長居しないよ?」
「…飲み物が切れてるから」
そして、そのまま並んで歩いていくと、大通りに出てコンビニに寄った。
カゴを持った智也は、店内を回って飲み物と菓子袋をテキトーに取っていく。
「智くん…が、食べるんだよね?」
「あぁ。ついでに桜子も食べるだろ」
「えぇ!?」
「スイーツ系もいるか?エクレア好きだったろ?」
言いながらティラミスをカゴに入れると、レジへ行ってしまった。
桜子もあとについて、バッグから財布を取りだそうとしたが、すぐに智也の筋張った腕と手の甲が止めてきた。