甘いヒーローの独り占め
6話
「飲み会!歓迎会いこう!」
「また急……」
「だって辞めちゃったら大変だろ~」
「半分はこの急な飲み会が原因なんじゃない?山ノ内さんも黒崎くんも、断ってくれて全然いいからね」
部長の言葉に呆れるサークルメンバーは、ため息をつきながら、断りやすい雰囲気を作ってくれた。
「…それじゃあ俺たちは」
「ありがとうございます!大丈夫です…!!」
バッグを持ち直した智也は、桜子の返事に止まってしまう。
ほぼ同時の返事だったため、慌てて智也を見上げた桜子。
「ご、ごめんね…被っちゃった…智くんどうぞ…」
「………いい。行きます。ただ、予定があるので、途中で抜けさせてもらってもいいですか?」
「おけおけ~。なんならほんと、その予定の方を優先してくれていいから」
「予約取れた!20人分!」
智也が肩でため息をついているなか、勧誘組の女の先輩が苦笑いで謝る。
部長がスマホから顔を上げて、メンバーに報告した。
部長の行動に呆れて小言を言われる様子を、桜子はほのぼのと見守った。
「………」
そして、智也もスマホを取って操作をすると、すぐにポケットに入れた。
…—
智也と桜子は、映画サークルの先輩たちと居酒屋にやってきた。
予約の名前を伝えた部長から先に店内へ入っていく。
店内はまだ人も少なく、繋げられたテーブルには、人数分の割り箸とおしぼりと皿が並べられていた。
「1年が主役だから、先に座りなよ、桜子ちゃん」
「は、はい…!ありがとうございます…!」
「桜子。俺の隣」
智也はすぐに出入り口の端に座ると、荷物を下ろして自分の左隣をトントンと叩いた。
見上げてくる智也の顔が、照明に当たると輝いて見える。
智也の言葉と行動に、サークル女子の先輩たちはソワソワしながら顔を見合わせた。
(…智くん……今日、それ…二回目ですよ…)
感情の乗らない笑顔が貼りついたまま、桜子は智也の隣に座った。
すると、智也の手が二の腕に回され、智也自身の方へ寄せられる。
「場所取ると先輩たちが座れない」
「ご、ごめん…!」
思わず赤くなる桜子は、周囲の視線を見られないまま、顔を下に向けた。
桜子の隣に女子の先輩が座ると、メンバーは各席に座った。
しばらくすると、注文された料理が次々と運ばれてくる。