姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

「ねえ、睦美……、どうしてこんなに私のこと嫌うの?」
「いまさら?」
 睦美は貼ったような笑みを作り、子供に分からせるような口調を向けた。
「麦ちゃんが、私の“ここ”に、醜い傷痕を付けたからでしょう」
 睦美は自分の胸を指した。

「……」
 ……よくも、すらすらと嘘を、
 私はぐっと我慢して、俯いて続ける。

「それ以外にはないの?」
「それ以外?」
 睦美はきょとんとした。
「睦美の胸の傷痕を治せば、もう私にひどいことしないの?」
「ひどいことって、言葉遣いに気を付けて?」
 睦美の我慢のスイッチはあっという間に入る。
 ほんのちょっと私が言い方を間違えただけでも許せない。
 ――だから!
 次の言葉をトリガーにしなければ。

「……私これまでずっと、睦美の言うこと聞いてきた。でも、もうつらいよ」
 私はすうっと息を吸う。
 ここからは、“ギャラリー”へ向けての台詞だ。

「睦美が私にひどいことされた、って嘘つくから、私はみんなに嫌われた」
「……」
 睦美が怪訝な顔つきになった。
 唐突過ぎたかもしれないと一瞬焦るが、押し切ろうと判断する。
「だから私、ずっと誤解されたまま、ひとりだった」
「……」
「睦美のカレシだった人たちにも、なんであんな嘘ついたの? 私、睦美のカレシを好きになったことなんて、一度もないのに」
 不穏な沈黙が流れた。
 ……もしかして、私の計画、気づかれた?

 私は嫌な予感と共に、そっと顔を上げた。
 私を見下ろしていた睦美が、急に立ち上がった。そのまま部屋を見回している。
 カメラがあるのは観葉植物の影、テーブルの花瓶の下、窓枠の隙間。
 
 睦美の動きが止まる。
 
 ……っ、
 息が詰まる……
 私の体に力が入る。 

「麦ちゃん、立って」
 感情の見えない声が言った。
「……」
 私はミニスカートを直しながら、よろよろと立ち上がった。
 
 


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