姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
だから睦美を引き取らなきゃいけなかったんだ……。
「世間体を気にしたパパが一番悪いんだ」
父は重い頭を片手で支えながら絞り出すように言った。
「麦に嫌われることが怖かったし、自分たちや麦が周りになんて言われるかと――」
「……」
……それで、誕生日も違うのに睦美と私を双子だなんてことにしたんだ。
すべてが繋がって、ようやく私はこの長い長い疑問と不信の迷路から抜け出せた気がした。
「これから、取り戻そう?」
私は提案した。
両親がどれほど傷つき悩み、人生が変わってしまったのかを知って、わだかまりは別の痛みに変わっていた。
もうここで終わりにしなくちゃ、と強く思う。
「私、パパとママと一緒にご飯食べたり、出掛けたりしたいんだ」
ずっと睦美が羨ましかった。
仲良し親子を見せつけられるたびに孤独に沈んできた。
「それに、また、じいじとばあばに会いたい」
父方の祖父母とはいつからか会えなくなった。
事情が分かれば理由も想像できた。睦美の存在を隠すためだったはずだ。
「そうだな、いつもパパかママだけで行ってたからな、次の休みに行こうか」
「行こう!」
「あ、でも麦……」
母が上目遣いになった。
「麦を連れてこない理由を反抗期にしてるのよ、ごめんね」
「あはは! じゃあ、ここからは『更生後』でいくね」
もうなんでもよいや、と思った。
――この日、睦美の話はしなかった。
そのことが唯一これ以上睦美を憎まない方法であるかのように、私たちはこれまでできなかった、“普通”を取り戻していく話をした。