姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「おはよう!」
朝早く、身支度を整える前にキッチンの母に朝の挨拶をした。
「麦、おはよう」
朝食を作っていた母が笑顔になった。
「パパ、おはよう!」
「おはよう、麦」
出掛ける準備を整えた父がダイニングテーブルに腰を落とした。
父はあれから毎日、家に帰ってくるようになった。どんなに夜が遅くても、朝が早くても。
三人が揃うのは朝だけだ。
だから私も、目覚ましをセットして朝食に臨む。
「ねえ、パパ。パパは今、職場でどんなことで悩んでる?」
子供にそんなことを聞かれても答えづらいだろうに、父は私の質問に真正面から答えてくれる。
「そうだなあ。いつもパパの机にお菓子を置く看護師さんがいてね――」
父は美味しそうに味噌汁を飲みながら、見舞われたトラブルを笑いを交えて話してくれた。
これまで両親と会話らしい会話をしてこなかった私は、父のことも母のことも、よく知らない。
何が好きで何が嫌で、何が楽しくて何が悲しいか……。
そういうひとつひとつを、集めたかった。
それは両親も同じらしく、私も常に質問攻めにあった。
「麦は昔、“ミティちゃん”が好きだっただろう? 今も好きかい?」
「ミティちゃん!」
ほうれん草のお浸しを口に運びながら、懐かしくて叫んだ。
父は学会に行くたびに、ご当地のミティちゃんを買ってきてくれたな、と思い出した。
「残念。今はね――」
私はスマホの待ち受け画面を見せる。