姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

「これはなんていうキャラクターなんだ?」
 首を傾げた父を見て、母が私のスマホを覗き込む仕草をした。私は画面を向ける。
「ママは知ってるわよ」
 母が得意げに顎をあげた。「シリーズなのよね」
「さすがママ」
「ずっと前、睦美もハマっててねだられたもの」
「……」
「……」
 一瞬だけ空気が止まる。   
「これにハマらない女子はいないからねえ」
 私は会話を戻した。
「麦、パパにもその画像を後で送ってくれ。忘れちゃいそうだ」
「了解!」
 
 私たちのそばには今も、睦美がいる。 
 長い間ずっと家族だった睦美が私たちの中から消える日は永遠にこない。
 だけどそれはあたりまえのことだ。
 
 
 朝食を食べ終え、父を玄関先に見送る。
 私はポケットに入れていたアクセサリーボックスを取り出した。
「パパ、これ睦美に返すの、たのんでもいい?」
 私の部屋にも睦美の私物が紛れ込んでいる。
 私に投げつけたもの、私が盗んだと罪を着せるために仕込んだもの、そのまま置き忘れたもの――。
 だいたいのものは捨てたが判断に困るものも多少ある。
「なんか高級そうだし」
 父が取りやすいように、手のそばに出す。
「わかったよ」
 父は静かに受け取って、鞄の中へしまった。
「いってらっしゃい!」
 母と一緒に見送った。

「あ。ママ、今日はバイト終わった後、れいちゃんたちと遊んでくるよ、そのままれいちゃんちお泊りするね」
「ママも今日は夜勤よ。麦、ハメ外さないようにね。逐一連絡入れること」
「わかってるってば。子供を信用してよね」
「それとルールは別なのよ」
「わー、きびしいぃ」
 私はわざと、げんなりしてみせる。
 
 遠慮はしない。
 過ぎ去った月日も数えない。

 私たちはまだ(・・)、家族に戻る途中にいる。
 

 
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