姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
実李を疑ったことを『勘違いだった』と訂正し、他愛のない悩みを書き続けた。
それ以降も、実李は相変わらず李加のやることを“真似”た。自分の方が優秀で、人気者で、器用なのに。
……実李から離れたい、
息が詰まる暮らしは李加の心を蝕んだ。
……誰も知らないところへ、行きたい
誰にも相談できなかった。もし実李と繋がっていたら……
誰も彼もが、実李の手先に思えた。「実李のように優しくなりなさい」そう諭す両親でさえも。
李加は慎重に動いた。
どこにでもついてくる実李を交わすのは簡単ではなかったが、わずかな隙を見つけては必死に自分の道を模索した。
李加は地方都市の看護専門学校を選んだ。
願書受付期間を一日過ぎた時、ようやく実李から解放された気がした。もうどんなに実李が望んでも願書は受け付けられない。一方で、大学受験も準備しているふりを続けた。実李と一緒に受けて、落ちればいいだけのことだったから。
大学入試に落ちた日、実は専門学校には受かっている――と夕食の食卓で家族に話した時の、実李の表情を李加は忘れることができない。
実李は、憎悪にも失望にも近い形相で李加を射るように見た。――裏切ったな?
そんな声が聞こえてくるような見知らぬ顔に、息が止まりそうになった。
それからは実李とひとことも口を利かなかった。
『心配だから、実李と一緒に暮らして来年また同じ大学を受験しなさい』と、実李から言われたであろう両親の説得も拒否した。
――――これでようやく実李から自由になれる。
李加は振り返らずに故郷を捨てた。