君の手を掴むための遠回り
あの日、冬の冷たい雨の中で泣き明かしてから、季節は巡り────
柔らかな春の風が街を吹き抜ける4月。
俺と瑠華は、高校2年という新しい春を迎えていた。
満開の桜並木が続く通学路。
俺の隣には、制服の袖を軽く引っ張りながら、心底嬉しそうに微笑む瑠華の姿があった。
「幸平、見て! 桜、すごく綺麗だよ」
「……ああ、そうだね」
そう答えながら、俺は歩きながら自然と瑠華の手をギュッと握りしめた。
指と指が絡み合い、体温が心地よく伝わってくる。
(もう、どこにも嘘はない)
誰かの影を追いかけながら手を繋ぐこともない。
一人になる恐怖を埋めるために、誰かの好意を奪う必要もない。
目の前にいる、世界で一番大好きな女の子だけをまっすぐ見つめられることが、こんなにも誇らしく、幸せなことなのだと、俺は生まれて初めて知った。
正式に付き合い始めてからの毎日は、今までモノクロに見えていた世界に一気に鮮やかな色が戻ってきたようだった。