君の手を掴むための遠回り
休日、初めて二人で出かけた街の小さなカフェ。
向かい合わせの席に座り、瑠華が嬉しそうにケーキを頬張る姿を眺めているだけで、胸の奥がじんわりと温かいもので満たされていく。
「幸平、一口食べる? はい、あーん」
「え…ここで? ちょっと恥ずかしくないか…?」
「いいの! 私たち、ずっと遠回りしてきたんだから、これくらい甘えさせて」
悪戯っぽく微笑む瑠華に押し切られ、差し出されたフォークを口にする。
思わず顔が熱くなる俺を見て、瑠華は楽しそうに声を上げて笑った。
かつて誰かと過ごしていた休日は、どこか焦燥感に追われ、空虚さを誤魔化すための作業でしかなかった。
けれど今は違う。
ただ目の前で笑う瑠華の瞳を見て、同じ空気を吸っているだけで、胸の穴が溶けるように塞がっていくのを感じていた。