君の手を掴むための遠回り

​帰り道、人目の少ない路地裏でふと足を止め、瑠華を引き寄せて抱きしめる。


​「わっ……幸平?」

​「……ごめん。急に抱きしめたくなった」

​「ふふ、いいよ。もっと強く抱きしめて」


​すっぽりと腕の中に収まる、華奢で温かい身体。

すれ違っていた9年間を取り戻すように、俺たちは何度も手を繋ぎ直し、言葉を交わし、確かめ合うようにキスを重ねた。

求められるがままに重ねるのではない、互いの愛おしさが溢れ出した本当のキス。

​触れ合うたびに、身体の芯から幸福感が溢れ出していた。

​
放課後、俺たちはあの公園のジャングルジムの上に座り、沈みゆく夕日を二人で眺めていた。

あの日、雨の中で泥まみれになりながら泣き叫んだ場所。

今では、俺たちの絆を解き明かしてくれた大切な場所に変わっている。


​「幸平、まだ……昔のこと、気にしたりしてる?」


​ふと、瑠華が俺の顔を覗き込んできた。

少しだけ不安そうな、けれど優しさに満ちた瞳。


​「ううん……ゼロになったわけじゃないよ。俺が付き合ってきた人たちを傷つけた事実も、瑠華を遠回りさせた過去も、消えるわけじゃないから」


< 35 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop