あの日、青い瞳の君に恋をした 前編:君と生きた日々
第1章
第1話
「莉愛ー! 待って、ストーリー撮る!」
「またー?」
学校の昼休み。
「莉愛も入って!」
「はやくー!」
スマホの角度を調整しながら、美月と結衣が楽しそうに私を呼ぶ。
「はいはい」
私は二人のところへ行き、向けられたスマホに適当にピースをして笑った。
「莉愛、適当すぎ!」
美月が不満そうに眉をしかめる。
「ちゃんとやってるじゃん」
「莉愛は適当に撮っても盛れるからいいよね〜」
結衣はそう言いながら、後ろから私に抱きついてきた。
「っ……そんなことないって」
「それ、逆に傷つくから!」
「なんでよ!」
顔を見合わせ、三人で笑う。
私は、一ノ瀬莉愛。
ごく普通の高校に通う、高校二年生。
美月と結衣とは一年生の時に仲良くなって、それからずっと三人でいる。
放課後に寄り道したり、くだらない動画を撮ったり、テスト前になって慌てて勉強したり。
そんな、どこにでもある高校生活を一緒に楽しんでいる。
いつもの昼休み。
いつもの会話。
私は、こういう時間が好きだった。
「ねぇ、莉愛」
「ん?」
「今日も水瀬くんと帰るの?」
「え?」
突然出てきた名前に、思わず瞬きをする。
水瀬蒼。
小さな頃から一緒にいる、私の幼馴染。
小学校も、中学校も。
そして高校まで同じ。
家も近いから、朝はほとんど毎日一緒に学校へ来ている。
親同士も仲がいい。
「帰るかどうかは知らない」
「またまた〜」
「何、その言い方」
「だって毎朝一緒に登校してるじゃん」
二人は私を見ながら、少女漫画のヒロインみたいに目を輝かせている。
二人が期待するようなことなんて、何もないのに。
「家近いんだから仕方ないでしょ」
「それを世間では幼馴染ラブっていうんだよ」
「言わないから」
「もう付き合っちゃえばいいのに」
「だから、そんなんじゃないって」
何度目だろう、このやり取り。
蒼は昔から、やたら女子に人気がある。
背も高いし、顔も整っている。
運動もできるし、そこそこ頭もいい。
本人はあんまり自覚してなさそうだけど。
「莉愛は水瀬くんのこと、本当に何とも思ってないの?」
「何ともって?」
「男として」
「…………」
一瞬、言葉に詰まった。
蒼を男として意識する、ということが、私にはいまいちよく分からない。
それに蒼だって、私のことはただの幼馴染としか思っていないだろうし。
「ほら!」
「違うって!向こうもそうだと思うし」
「今、間があった!」
「なかった!」
二人が楽しそうに笑う。
正直、こういう話は少し苦手だ。
恋愛に興味がないわけじゃない。
ただ――「好き」っていう感情が、私にはまだよく分からない。
「でも、ぐずぐずしてると他の子に取られちゃうかもよ〜」
二人は楽しそうに恋バナを続けている。
まあ、高校生女子が三人集まれば、こういう話になるのも珍しくない。
「もう、この話終わり!」
私は逃げるように、自分の席へ戻った。
「…………」
蒼を、男として。
考えたことがないと言えば、嘘になる。
昔は、本当にただの幼馴染だった。
一緒に虫を捕まえて。
くだらないことで喧嘩して。
お互いの家に勝手に上がって。
そんな関係。
でも、高校生になって。
蒼が知らない女の子に呼び止められているところを見たり、「水瀬くんってかっこいいよね」なんて話を聞いたりすると。
ほんの少しだけ、変な感じがする。
胸の奥が、もやっとするというか。
だからといって、付き合いたいのかと聞かれたら分からない。
好きなのかどうかも、分からない。
幼馴染すぎるのだ。
みんなが知っている蒼のいいところも。
みんなが知らない、あいつの格好悪いところも。
私はたくさん知っている。
「…………ないな」
考えれば考えるほど違う気がして、私は一人、小さく呟いた。
「またー?」
学校の昼休み。
「莉愛も入って!」
「はやくー!」
スマホの角度を調整しながら、美月と結衣が楽しそうに私を呼ぶ。
「はいはい」
私は二人のところへ行き、向けられたスマホに適当にピースをして笑った。
「莉愛、適当すぎ!」
美月が不満そうに眉をしかめる。
「ちゃんとやってるじゃん」
「莉愛は適当に撮っても盛れるからいいよね〜」
結衣はそう言いながら、後ろから私に抱きついてきた。
「っ……そんなことないって」
「それ、逆に傷つくから!」
「なんでよ!」
顔を見合わせ、三人で笑う。
私は、一ノ瀬莉愛。
ごく普通の高校に通う、高校二年生。
美月と結衣とは一年生の時に仲良くなって、それからずっと三人でいる。
放課後に寄り道したり、くだらない動画を撮ったり、テスト前になって慌てて勉強したり。
そんな、どこにでもある高校生活を一緒に楽しんでいる。
いつもの昼休み。
いつもの会話。
私は、こういう時間が好きだった。
「ねぇ、莉愛」
「ん?」
「今日も水瀬くんと帰るの?」
「え?」
突然出てきた名前に、思わず瞬きをする。
水瀬蒼。
小さな頃から一緒にいる、私の幼馴染。
小学校も、中学校も。
そして高校まで同じ。
家も近いから、朝はほとんど毎日一緒に学校へ来ている。
親同士も仲がいい。
「帰るかどうかは知らない」
「またまた〜」
「何、その言い方」
「だって毎朝一緒に登校してるじゃん」
二人は私を見ながら、少女漫画のヒロインみたいに目を輝かせている。
二人が期待するようなことなんて、何もないのに。
「家近いんだから仕方ないでしょ」
「それを世間では幼馴染ラブっていうんだよ」
「言わないから」
「もう付き合っちゃえばいいのに」
「だから、そんなんじゃないって」
何度目だろう、このやり取り。
蒼は昔から、やたら女子に人気がある。
背も高いし、顔も整っている。
運動もできるし、そこそこ頭もいい。
本人はあんまり自覚してなさそうだけど。
「莉愛は水瀬くんのこと、本当に何とも思ってないの?」
「何ともって?」
「男として」
「…………」
一瞬、言葉に詰まった。
蒼を男として意識する、ということが、私にはいまいちよく分からない。
それに蒼だって、私のことはただの幼馴染としか思っていないだろうし。
「ほら!」
「違うって!向こうもそうだと思うし」
「今、間があった!」
「なかった!」
二人が楽しそうに笑う。
正直、こういう話は少し苦手だ。
恋愛に興味がないわけじゃない。
ただ――「好き」っていう感情が、私にはまだよく分からない。
「でも、ぐずぐずしてると他の子に取られちゃうかもよ〜」
二人は楽しそうに恋バナを続けている。
まあ、高校生女子が三人集まれば、こういう話になるのも珍しくない。
「もう、この話終わり!」
私は逃げるように、自分の席へ戻った。
「…………」
蒼を、男として。
考えたことがないと言えば、嘘になる。
昔は、本当にただの幼馴染だった。
一緒に虫を捕まえて。
くだらないことで喧嘩して。
お互いの家に勝手に上がって。
そんな関係。
でも、高校生になって。
蒼が知らない女の子に呼び止められているところを見たり、「水瀬くんってかっこいいよね」なんて話を聞いたりすると。
ほんの少しだけ、変な感じがする。
胸の奥が、もやっとするというか。
だからといって、付き合いたいのかと聞かれたら分からない。
好きなのかどうかも、分からない。
幼馴染すぎるのだ。
みんなが知っている蒼のいいところも。
みんなが知らない、あいつの格好悪いところも。
私はたくさん知っている。
「…………ないな」
考えれば考えるほど違う気がして、私は一人、小さく呟いた。