学校の完璧4人アイドルには、秘密の顔がある。
昼休み。

私は一人でお弁当を食べようとしていた。

「美桜ちゃん」

「ん?」

瀬戸くんが机を持ってきた。

「ここ、いい?」

「え、うん」

「やった」

「……?」

なぜか嬉しそう。

そこへ一ノ瀬くんもやってきた。

「僕もいい?」

「もちろん……?」

さらに黒崎くん。

「俺も」

「え」

最後に九条くん。

「僕も」

「……」

気づけば。

私の机の周りに四人が集まっていた。

「……なんで?」

思わず聞いてしまう。

「え?」

一ノ瀬くんが首を傾げる。

「いや……なんでみんなここに?」

「席が近いから?」

瀬戸くんが笑う。

「それだけ?」

「それだけ」

「……」

なんだ。

それなら納得――

「あと、美桜ちゃんと話してみたかったし」

「え?」

「僕も」

一ノ瀬くんが続ける。

「俺も」

黒崎くんまで。

「僕も」

九条くんまで。

「……」

なんで?

私、昨日までほとんど話したことなかったよね?

「白石さんってさ」

黒崎くんが口を開く。

「四大アイドルとか、あんまり興味ない?」

「え?」

「周りの女子、いつも俺らのこと見てるから」

「ああ……」

確かに。

教室の端から、女子たちがこちらを見ている。

「でも私は……」

少し考えて。

「普通にクラスメイトだと思ってるけど」

「……」

四人が一瞬、黙った。

「……それ」

一ノ瀬くんが小さく笑った。

「なんか嬉しい」

「え?」

「いや、なんでもない」

その笑顔は。

学校でいつも見かける完璧な笑顔とは、少し違っていた。

なんだろう。

ほんの少しだけ。

安心しているような。

そんな顔。

「……?」

私が不思議そうに見ていると。

「美桜ちゃん」

瀬戸くんが突然、身を乗り出した。

「今日、放課後って暇?」

「え?」

「ちょっと付き合ってほしいんだけど」

「どこに?」

「それは――」

「瀬戸」

黒崎くんが遮った。

「何するつもり?」

「え、別に?」

「怪しい」

「怪しくないって!」

二人が言い合い始める。

その横で九条くんが、

「僕も一緒に行っていい?」

と普通に混ざる。

「いや、九条まで来たら四人全員になるだろ」

「じゃあ全員で行けばいい」

「それは目立つ」

「……確かに」

「……」

私は四人を見ながら思った。

この人たち。

本当に仲良いんだ。

学校では、それぞれ別の場所にいることが多いから。

こんな姿を見るのは初めてだった。

「……ふふ」

思わず笑う。

「何?」

一ノ瀬くんが聞いてくる。

「いや……」

私は笑いながら答えた。

「思ってたより、普通なんだなって」

「……」

四人が固まった。

「……それ褒めてる?」

瀬戸くんが苦笑する。

「たぶん?」

「たぶん!?」

その瞬間。

教室に笑い声が広がった。

――このときの私は、まだ知らなかった。

この席替えが。

私と四人の関係を、大きく変えるきっかけになることを。

そして。

学校では絶対に見せない彼らの「本当の顔」を。

私が知ることになるなんて。

このときは、まだ――

想像もしていなかった。
< 4 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop