恋と焦燥のロードマップ
その夜は、気づけば日付が変わる少し前まで話していた。今日の撮影であったことを少し話して、雫の仕事の話を聞いて、途中でどうでもいい話になって二人で笑った。特別なことなんて何もない。ただ、電話を切るようにメッセージのやり取りを終えるとき、いつもより少しだけ名残惜しさが残った。
『雫:そろそろ寝ようかな』
『湊:うん。明日も仕事だもんね』
『雫:湊もね』
『湊:お互い頑張ろう』
『雫:おやすみ』
『湊:おやすみ』
画面を閉じてからも、しばらくスマートフォンを手の中に残していた。
それから似たような夜が少しずつ増えていった。
仕事が終わった時に連絡をする。帰宅してから少しだけ話す。休みの日には次に会う約束をする。そんなやりとりが続いているうちに雫と会うことが特別な予定ではなくなっていった。むしろ、次にいつ会えるのか分からないほうが落ち着かない。そんな自分に気づいて、俺は少しだけ驚いた。
その変化に、最初に気づいたのは俺自身ではなかった。
ある日の撮影終わり、事務所に戻ると、マネージャーの佐伯さんはデスクで明日のスケジュールの確認をしていた。俺が「お疲れ様です」と声をかけると、佐伯さんは顔を上げ、しばらく俺の顔を見た。
「……湊」
「はい?」
「最近、なにかいいことありました?」
唐突な質問に、思わず足を止めた。
「なんですか、それ」
「いや、なんとなく」
佐伯さんはそう言って、手元のタブレットに視線を戻した。
「最近ちょっと機嫌がいいですよね」
「俺が?」
「はい」
「そうですか?」
「そうですよ。まぁ本人だけ気づいてないみたいですけど」
言われてみれば、思い当たる節しかなかった。
仕事が終われば、雫に連絡したくなる。撮影の合間にスマートフォンを見ると、メッセージが届いていないか気になってしまう。次に会う約束が決まっていれば、それだけで数日先の予定まで少し楽しみに思えた。でも、それを自分から口にするのは、少しだけ恥ずかしかった。
「……まぁ、ちょっとあります」
「やっぱり」
佐伯さんが再び顔をあげ、俺の顔を見ている。
「女性ですか?」
「……はい」
「へぇ」
驚いたような、でもどこか納得したような声だった。
「Linkってアプリで知り合った人がいて。何度か会ってます」
「なるほど」
『雫:そろそろ寝ようかな』
『湊:うん。明日も仕事だもんね』
『雫:湊もね』
『湊:お互い頑張ろう』
『雫:おやすみ』
『湊:おやすみ』
画面を閉じてからも、しばらくスマートフォンを手の中に残していた。
それから似たような夜が少しずつ増えていった。
仕事が終わった時に連絡をする。帰宅してから少しだけ話す。休みの日には次に会う約束をする。そんなやりとりが続いているうちに雫と会うことが特別な予定ではなくなっていった。むしろ、次にいつ会えるのか分からないほうが落ち着かない。そんな自分に気づいて、俺は少しだけ驚いた。
その変化に、最初に気づいたのは俺自身ではなかった。
ある日の撮影終わり、事務所に戻ると、マネージャーの佐伯さんはデスクで明日のスケジュールの確認をしていた。俺が「お疲れ様です」と声をかけると、佐伯さんは顔を上げ、しばらく俺の顔を見た。
「……湊」
「はい?」
「最近、なにかいいことありました?」
唐突な質問に、思わず足を止めた。
「なんですか、それ」
「いや、なんとなく」
佐伯さんはそう言って、手元のタブレットに視線を戻した。
「最近ちょっと機嫌がいいですよね」
「俺が?」
「はい」
「そうですか?」
「そうですよ。まぁ本人だけ気づいてないみたいですけど」
言われてみれば、思い当たる節しかなかった。
仕事が終われば、雫に連絡したくなる。撮影の合間にスマートフォンを見ると、メッセージが届いていないか気になってしまう。次に会う約束が決まっていれば、それだけで数日先の予定まで少し楽しみに思えた。でも、それを自分から口にするのは、少しだけ恥ずかしかった。
「……まぁ、ちょっとあります」
「やっぱり」
佐伯さんが再び顔をあげ、俺の顔を見ている。
「女性ですか?」
「……はい」
「へぇ」
驚いたような、でもどこか納得したような声だった。
「Linkってアプリで知り合った人がいて。何度か会ってます」
「なるほど」