恋と焦燥のロードマップ
「まだ、付き合ってるとかではないんですけど」
「ああ、そうなんですね」
佐伯さんはからかうようなことを言わず、どこか真剣に俺の話を聞いていた。
「どんな人なんです?」
「……普通の人です」
「普通って?」
「仕事してて、映画が好きで…あとはゆっくり話す人です」
話しているうちに、自分でも少しずつ顔が緩んでいくのが分かった。佐伯さんはそんな俺の顔を見て、小さく笑った。
「結構、好きなんですね」
「……まだ、分からないです」
そう答えたものの、本当に分からないわけではなかった。ただ、まだ自分の中のその気持ちに名前をつけるのが少し怖かった。
佐伯さんは、それ以上踏み込まずに頷いた。
「まぁ、いいんじゃないですか」
「……いいんですか?」
「何がです?」
「その……恋愛とか」
「湊はアイドルじゃないでしょう」
あまりにもあっさり言われて、少し拍子抜けした。
「それに、独り身でいることを売りにしているわけじゃないですし、会社としても、そこを禁止にする理由はないですよ」
「……そうですか」
「はい。ただ、」
佐伯さんはタブレットを閉じ、机に置いた。
「週刊誌とかには、気をつけてくださいね」
「……はい」
「湊本人はいいんですよ。多少撮られたって、まぁ仕事柄そういうこともありますから。でも、相手が一般の方なら話は別です」
その言葉を聞いて、俺は黙ってしまった。
「写真一枚で、名前まで調べられることもありますし。今はSNSもありますからね。本人にその気がなくても、周りから勝手に広がることもある」
「分かってます」
それだけは、迷わず答えられた。雫には、迷惑かけたくなかった。
俺と会っているというだけで、知らない誰かに写真を撮られたり、名前を調べられたり、勝手なことを書かれたりするようなことだけは避けたかった。
「まぁ、そこだけ気をつけてもらえれば」
佐伯さんは、そう言って再びタブレットを手に取った。
「それにしても、最近ちょっと楽しそうですよ」
「……そうですか?」
「そうです。いいことじゃないですか」
それだけ言って、佐伯さんは仕事に戻った。
俺も「ありがとうございます」とだけ返して、その場を離れた。
事務所を出てから、駅へ向かう道を歩きながら、さっきの会話を思い返した。
付き合っているわけじゃない。
「ああ、そうなんですね」
佐伯さんはからかうようなことを言わず、どこか真剣に俺の話を聞いていた。
「どんな人なんです?」
「……普通の人です」
「普通って?」
「仕事してて、映画が好きで…あとはゆっくり話す人です」
話しているうちに、自分でも少しずつ顔が緩んでいくのが分かった。佐伯さんはそんな俺の顔を見て、小さく笑った。
「結構、好きなんですね」
「……まだ、分からないです」
そう答えたものの、本当に分からないわけではなかった。ただ、まだ自分の中のその気持ちに名前をつけるのが少し怖かった。
佐伯さんは、それ以上踏み込まずに頷いた。
「まぁ、いいんじゃないですか」
「……いいんですか?」
「何がです?」
「その……恋愛とか」
「湊はアイドルじゃないでしょう」
あまりにもあっさり言われて、少し拍子抜けした。
「それに、独り身でいることを売りにしているわけじゃないですし、会社としても、そこを禁止にする理由はないですよ」
「……そうですか」
「はい。ただ、」
佐伯さんはタブレットを閉じ、机に置いた。
「週刊誌とかには、気をつけてくださいね」
「……はい」
「湊本人はいいんですよ。多少撮られたって、まぁ仕事柄そういうこともありますから。でも、相手が一般の方なら話は別です」
その言葉を聞いて、俺は黙ってしまった。
「写真一枚で、名前まで調べられることもありますし。今はSNSもありますからね。本人にその気がなくても、周りから勝手に広がることもある」
「分かってます」
それだけは、迷わず答えられた。雫には、迷惑かけたくなかった。
俺と会っているというだけで、知らない誰かに写真を撮られたり、名前を調べられたり、勝手なことを書かれたりするようなことだけは避けたかった。
「まぁ、そこだけ気をつけてもらえれば」
佐伯さんは、そう言って再びタブレットを手に取った。
「それにしても、最近ちょっと楽しそうですよ」
「……そうですか?」
「そうです。いいことじゃないですか」
それだけ言って、佐伯さんは仕事に戻った。
俺も「ありがとうございます」とだけ返して、その場を離れた。
事務所を出てから、駅へ向かう道を歩きながら、さっきの会話を思い返した。
付き合っているわけじゃない。