恋と焦燥のロードマップ
それ以上、俺は詳しくは話さなかった。あの頃のことを思い返せば、親父にも親父なりの考えみたいなのがあったんだと思うし、実際俺の親父の旅館は他の人に自慢できるくらい、いい旅館だと思う。それでも、あの時の俺には自分の夢を諦めるなんて選択肢はなかった。
雫は、それ以上のことを聞いてはこなかった。
しばらく料理を食べる音だけが続いて、それから、ふと思いついたように俺は顔を上げた。
「そういえば、雫の家族ってどんな感じ?」
俺の中では、さっきまで話していた自分の家族の話の続きをするくらいの感覚だったし、雫がどんな家で育ったのか、少し知ってみたいと思っただけだった。でも、箸を持つ雫の手が、ほんの少しだけ止まった。
「……仲は、良かった…のかな」
「……のかな?」
思わず聞き返してしまった。雫はすぐには答えず、何か思い出そうとするように視線を落とした。その表情を見ていると、さっきまでの何気ない質問が、少しだけ踏み込みすぎたような気がしてくる。
「うん。たぶん、普通になかったと思う。ご飯一緒に食べたり、くだらないことで喧嘩したり…そういうの」
「そっか」
雫は小さく笑った。その笑い方はいつもと大きく違うわけじゃない。ただ、何かを懐かしんでるようにも見えたし、逆に、懐かしむことしかできないようにも見えた。
「でも、もう十年くらい前のことだから」
その言葉を聞いて、少しだけ引っかかった。
十年.
随分前の話なのはわかる。でも、家族のことを話しているのに、まるでそこから先の時間を数えているような言い方だった。それが何を意味するのかまではわからない。だから、俺はそれ以上聞かなかった。
「……もっと、家族と話しておけば良かったかな……」
その声はさっきよりも小さくて、俺に聞かせると言うより、自分自身に言っているようだった。
俺はそれ以上何も言わず、目の前の料理に視線を戻した。
しばらくして、雫もそれ以上は何も言わなかった。少しだけ空気が変わったような気はしたけど、無理に戻そするのも違う気がして、俺たちはそのまま別の話をしながら食事を終えた。
店を出る頃には、さっきまでの会話もいつもの調子に戻っていた。
「今日はありがとう、楽しかった」
帰り際、雫がそういって笑った。
「こちらこそ、お昼だけでも一緒できて良かった」
雫は、それ以上のことを聞いてはこなかった。
しばらく料理を食べる音だけが続いて、それから、ふと思いついたように俺は顔を上げた。
「そういえば、雫の家族ってどんな感じ?」
俺の中では、さっきまで話していた自分の家族の話の続きをするくらいの感覚だったし、雫がどんな家で育ったのか、少し知ってみたいと思っただけだった。でも、箸を持つ雫の手が、ほんの少しだけ止まった。
「……仲は、良かった…のかな」
「……のかな?」
思わず聞き返してしまった。雫はすぐには答えず、何か思い出そうとするように視線を落とした。その表情を見ていると、さっきまでの何気ない質問が、少しだけ踏み込みすぎたような気がしてくる。
「うん。たぶん、普通になかったと思う。ご飯一緒に食べたり、くだらないことで喧嘩したり…そういうの」
「そっか」
雫は小さく笑った。その笑い方はいつもと大きく違うわけじゃない。ただ、何かを懐かしんでるようにも見えたし、逆に、懐かしむことしかできないようにも見えた。
「でも、もう十年くらい前のことだから」
その言葉を聞いて、少しだけ引っかかった。
十年.
随分前の話なのはわかる。でも、家族のことを話しているのに、まるでそこから先の時間を数えているような言い方だった。それが何を意味するのかまではわからない。だから、俺はそれ以上聞かなかった。
「……もっと、家族と話しておけば良かったかな……」
その声はさっきよりも小さくて、俺に聞かせると言うより、自分自身に言っているようだった。
俺はそれ以上何も言わず、目の前の料理に視線を戻した。
しばらくして、雫もそれ以上は何も言わなかった。少しだけ空気が変わったような気はしたけど、無理に戻そするのも違う気がして、俺たちはそのまま別の話をしながら食事を終えた。
店を出る頃には、さっきまでの会話もいつもの調子に戻っていた。
「今日はありがとう、楽しかった」
帰り際、雫がそういって笑った。
「こちらこそ、お昼だけでも一緒できて良かった」