恋と焦燥のロードマップ
それだけなのかもしれない。でも、その「それだけ」が、雫にとってはきっと簡単なことじゃなかった。
「……よかった」
気づけば、そんな言葉が口から出ていた。
雫は少しだけこちらを見て、それから穏やかに笑った。
「うん」
その声を聞いてから、俺は何も言わずに座席の下へ手を伸ばした。触れた指先をそのまま雫の手に重ねると、雫も驚いた様子は見せず、ゆっくりと指を絡めてくる。
言葉にするほどのことじゃないのかもしれない。それでも今は、何かを言うより、こうして隣にいることのほうが大切な気がした。
握った手から伝わる温度を感じながら、俺はしばらく何も考えずに、ただ雫の隣にいた。
やがて電車は、俺が昔よく見ていた景色の中へ入っていった。窓の外に広がる街並みは、記憶の中に残っているものより少しだけ変わっているようにも見えたけど、駅前の建物や、昔から変わってい道を見つけるたびに、忘れられていたはずの風景が不意に蘇ってくる。
地元の駅に着いて、改札を抜ける。
隣町には有名な観光地があって、休日になるとそこへ向かう人も多い。でも、俺が育ったこの街自体は、観光地というほどの場所じゃない。駅前にも大きな店があるわけじゃないし、わざわざ遠くから人が訪れるようなものもない。俺にとっては、ただの昔からの暮らしてきた街だった。
「ねぇ、湊」
駅を出て少し歩いたところで雫が俺の隣から声をかけてきた。
「ん?」
「まだ時間ある?」
「うん。家着くの昼過ぎくらいって母さんに伝えてあるから」
そう答えると、雫は駅前の通りを眺めながら、少し考えるようにしてから言った。
「じゃあ、湊が育った街、ちょっと見てみたい」
「この辺?」
「うん」
「……別に、何もないよ」
思わずそう返すと、雫は小さく笑った。
「それでもいいよ。湊が昔歩いたところとか、見てみたい」
その言葉を聞いて、少しだけ照れ臭くなった。
自分にとっては当たり前だった場所を雫が見たいと言ってくれる。それだけのはずなのに、なぜか悪い気はしなかった。
俺たちは駅前から続く通りを、特に目的地も決めずに歩き始めた。
「……よかった」
気づけば、そんな言葉が口から出ていた。
雫は少しだけこちらを見て、それから穏やかに笑った。
「うん」
その声を聞いてから、俺は何も言わずに座席の下へ手を伸ばした。触れた指先をそのまま雫の手に重ねると、雫も驚いた様子は見せず、ゆっくりと指を絡めてくる。
言葉にするほどのことじゃないのかもしれない。それでも今は、何かを言うより、こうして隣にいることのほうが大切な気がした。
握った手から伝わる温度を感じながら、俺はしばらく何も考えずに、ただ雫の隣にいた。
やがて電車は、俺が昔よく見ていた景色の中へ入っていった。窓の外に広がる街並みは、記憶の中に残っているものより少しだけ変わっているようにも見えたけど、駅前の建物や、昔から変わってい道を見つけるたびに、忘れられていたはずの風景が不意に蘇ってくる。
地元の駅に着いて、改札を抜ける。
隣町には有名な観光地があって、休日になるとそこへ向かう人も多い。でも、俺が育ったこの街自体は、観光地というほどの場所じゃない。駅前にも大きな店があるわけじゃないし、わざわざ遠くから人が訪れるようなものもない。俺にとっては、ただの昔からの暮らしてきた街だった。
「ねぇ、湊」
駅を出て少し歩いたところで雫が俺の隣から声をかけてきた。
「ん?」
「まだ時間ある?」
「うん。家着くの昼過ぎくらいって母さんに伝えてあるから」
そう答えると、雫は駅前の通りを眺めながら、少し考えるようにしてから言った。
「じゃあ、湊が育った街、ちょっと見てみたい」
「この辺?」
「うん」
「……別に、何もないよ」
思わずそう返すと、雫は小さく笑った。
「それでもいいよ。湊が昔歩いたところとか、見てみたい」
その言葉を聞いて、少しだけ照れ臭くなった。
自分にとっては当たり前だった場所を雫が見たいと言ってくれる。それだけのはずなのに、なぜか悪い気はしなかった。
俺たちは駅前から続く通りを、特に目的地も決めずに歩き始めた。