エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「あ……これ、ですか」

「この学園に、そのゆるいやつ、似合ってない」

「えっ」

初対面でそんなこと言うなんて、ひどい。

むっとして見上げると、彼は口元だけで笑った。
それが信じられないくらい意地悪で、思わず悔しくなる。

「でも、おまえには似合ってる」

「……それ、ほめてますか」

「さあ」

なに、この人。
顔がいいからって、なんでも許されると思ってるのかな。

そう思った瞬間、手に持っていた書類が風にあおられて、ぱさっと地面に散らばった。

「あっ……!」

私があわててしゃがみこむより先に、その男の子が紙を拾い集めてくれる。
長い指で一枚ずつ丁寧にそろえて、何も言わずに差し出した。

「ほら」

「……ありがとうございます」

「ぼーっとしてると、すぐ置いてかれるぞ」

言い方はやっぱり少し意地悪だ。
なのに、渡してくれた書類の端はきれいにそろっていた。

意地悪なのに、たまに優しいからよくわからない人。

私が不思議そうに見つめていると、近くを通りかかった生徒たちが小さくざわめいた。

「鳳城さま……」
「やっぱり今日もすごい……」
「相変わらず別格……」

その名前に、私は目を瞬いた。

鳳城カイル。

学園の頂点に立つ、誰もが知る最上級王子。
家柄も容姿も成績も、全部が別格だと噂される存在。

そんな人が、どうして入学初日の私なんかに話しかけてくるんだろう。

「おまえ、飽きないな」

「まだ何もしてませんけど……!」

「してる。見てるだけで面白い」

「ひどいです」

頬をふくらませると、カイルくんは少しだけ目を細めた。
その表情が、ほんの一瞬だけやわらかく見えて、胸が変にざわつく。

そのとき、校舎のほうから鐘の音が響いた。

「あ……急がないと」

私はあわてて書類を抱え直し、案内板へ目を向ける。
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