エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「は、はじめまして……結城ほのかです」

私がぺこりと頭を下げると、麗華さんはほんの少しだけ首をかしげた。

「可愛らしい方ですのね」

褒められているはずなのに、なぜか素直に喜べない。
そのとき、すぐ隣から低い声が落ちた。

「麗華」

鳳城くんだった。

「何しに来た」

「いやですわ。そんなに警戒なさらなくても」

麗華さんはくすっと笑う。

「ただご挨拶に来ただけですのに」

「だったら済んだだろ」

その返しが思ったより冷たくて、私は思わず鳳城くんを見てしまう。
けれど麗華さんは気にした様子もなく、むしろ余裕のある笑みを深くした。

「相変わらずですのね。でも、そのくらいのほうがカイルさまらしくて安心しましたわ」

……カイルさま。

そんなふうに自然に呼べる距離感が、胸の奥をちくりと刺した。

私の知らない鳳城くんを、この人はたくさん知っている。
そう思っただけで、苦しくなる。

「それにしても」

麗華さんの視線が、もう一度私へ向く。

「まさかカイルさまが、学園で特定の方にここまで構うなんて思いませんでした」

「……」

「少し驚いておりますの」

言い方はやさしい。
でも、試されているのがわかる。

私は何を言えばいいのかわからなくて、思わず鳳城くんを見た。
すると彼は、面倒くさそうにため息をつく。

「ほのか、行くぞ」

「えっ」

自然に名前で呼ばれて、また胸が跳ねる。

麗華さんの前だということもあって、余計に意識してしまう。
鳳城くんは私の手首を軽くつかむと、そのまま歩き出そうとした。

「お待ちくださいな、カイルさま」

麗華さんの声が後ろから追いかけてくる。

「お話があるんですの」

「あとで聞く」

「大事なお話でも?」

足が止まる。
鳳城くんの表情は見えなかったけれど、空気がほんの少しだけ張りつめたのがわかった。

「今じゃない」

短く答えて、鳳城くんはそのまま私を連れてその場を離れる。

中庭から少し離れた廊下まで来たところで、私はようやく小さく息をついた。

「……ごめんね」

「何が」

「なんか、私のせいで空気悪くしちゃった気がして」

そう言うと、鳳城くんは足を止めて私を見た。

「おまえのせいじゃない」

「でも……」

「気にすんな」

きっぱり言われて、少しだけほっとする。
だけど、胸のざわざわは消えなかった。

「あの人、すごく綺麗だったね」

思わずこぼすと、鳳城くんは眉をひそめる。
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