エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
誰かを待っているみたいに。

「……きれい」

思わずつぶやいた、そのときだった。

「カイルさま」

その名前に、胸がどくんと跳ねる。

見ると、お嬢さまの視線の先から、鳳城くんが歩いてくるところだった。
いつも通り人目を引く金髪。
気だるそうなのに圧倒的に目立つ。

お嬢さまは彼の前まで行くと、やわらかく微笑んだ。

「お久しぶりです」

「……来てたんだ」

鳳城くんの声は、驚いているようでいて、どこか冷静だった。
でも、初対面のときとは違う。
明らかに知っている相手へ向ける声。

私はなぜか、その場から動けなくなってしまった。

「学園にご挨拶に伺ったんですの。ついでに、カイルさまのお顔も見たくて」

ついで、なんて言いながら、その微笑みはとても親しげだった。

まわりでもひそひそと声が広がっていく。

「あの人って……」
「もしかして、九重家のお嬢さま?」
「え、じゃあ鳳城さまと釣り合う本物のお嬢さまじゃん」

九重家。

その名前だけで、名門だとわかるくらい有名な家だった。
私はますます居心地が悪くなって、思わず本を抱える手に力をこめる。

するとそのとき、お嬢さまの目がふとこちらを向いた。

綺麗な瞳。
にこやかな笑顔。
なのに、なぜか一瞬で背筋が冷たくなる。

「……あなたが、結城さん?」

突然名前を呼ばれて、私はびくっとした。

「え……?」

「噂は聞いておりますわ。成績特待で入学された方でしょう?」

やわらかい声。
けれど、その言葉の奥にあるものが冷たい。

私は小さくうなずいた。

「は、はい……」

「そう。あなたが」

意味ありげにつぶやいたあと、お嬢さまは優雅に微笑む。

「はじめまして。九重麗華です」

れいか。
名前まで完璧すぎる。
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