エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
放課後。
今日はひとりで帰ろう。
そう思って鞄を抱え、こっそり教室を出ようとした、そのとき。

「結城さん」

呼び止められて、足が止まる。

振り向くと、そこにいたのは九重麗華だった。

「九重さん……」

麗華はいつもの完璧な笑みを浮かべたまま、静かにこちらへ近づいてくる。

「少しだけ、よろしいかしら」

断れる空気じゃなかった。
私は小さくうなずいて、廊下の窓際までついていく。

夕方の光が差しこむ静かな廊下。
人気は少なく、やけに声が響きそうだった。

「昨日は失礼いたしました」

麗華はやわらかく微笑む。

「急に声をかけてしまって」

「い、いえ……」

「でも、少し安心しましたわ」

「安心……?」

「あなたが思っていたより分別のある方で」

意味がすぐにはわからなくて、私は目を瞬いた。
けれど麗華の次の言葉で、その意味を思い知らされる。
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