エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
そのときだった。

「へえ」

低く冷たい声が、資料室の入口から落ちてきた。

反射みたいに振り向く。
そこに立っていたのは、鳳城くんだった。

「鳳城くん……?」

どうしてここに。
そう思うより先に、空気が一気に張りつめる。

中野先輩が目を丸くした。

「鳳城、どうしたの?」

「あんたこそ何してんの」

声音は静かなのに、妙に刺がある。
私はあわてて口を開いた。

「図書委員のお手伝いで……」

「ふうん」

短い返事。
でも、その金色の瞳は中野先輩のほうをじっと見ていた。

中野先輩は苦笑する。

「別に変なことしてないよ。本の整理を手伝ってもらってただけ」

「見ればわかる」

「ならその顔やめろって」

そのやり取りに、私はおろおろするしかない。
鳳城くんは私へ視線を戻すと、当然みたいに言った。

「ほのか、帰るぞ」

「え?」

「もう終わりだろ」

「でも、まだ少し残ってて……」

「俺も手伝う」

「えっ!?」

中野先輩まで目を見開いた。

「鳳城が?」

「悪い?」

「いや、悪くはないけど……かなり珍しいなって」

鳳城くんは答えず、棚の上の本へ手を伸ばす。
長い指が器用に本を並べるのを見て、私はぽかんとしてしまった。
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