エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「なに、その顔」

「だって、鳳城くんがこういうことするの意外で……」

「おまえがやってるからだろ」

さらっと言われて、胸がどくっと鳴る。

中野先輩が小さく笑った。

「なるほどね」

「何」

「いや。結城さん、愛されてるなって思って」

その瞬間。
鳳城くんの手がぴたりと止まった。

「……は?」

低い声。
空気が一気に冷える。

私は顔が熱くなるのを感じながら、あわてて首を振った。

「ち、違います……!」

「違わないでしょ」

中野先輩は楽しそうに言う。

「こんなわかりやすく迎えに来る時点で」

「先輩……!」

恥ずかしすぎて、もう消えたい。
けれど鳳城くんは、否定しなかった。

ただ少しだけ目を細めて、中野先輩を見る。

「……あんた、ほのかに馴れ馴れしい」

「え?」

今度は中野先輩がきょとんとする番だった。

「それ、委員会の後輩に言う?」

「言う」

「鳳城くん!?」

あまりに真顔で言うから、私は思わず声を上げてしまう。

中野先輩は一瞬黙ったあと、ふっと笑った。

「もしかして嫉妬?」

「してない」

即答。
だけど絶対、してる。

その場の空気が変に熱くなって、私は何をしていいかわからなくなる。
本の整理はなんとか終わったものの、落ち着かないまま資料室を出ることになった。

廊下に出ると、鳳城くんは無言で私の鞄を持った。

「え、ちょっと」

「行くぞ」

「自分で持てるよ」

「知ってる」

じゃあなんで持つの。
そう言いたいのに、鳳城くんの機嫌が明らかによくなくて、私は言葉を飲みこんだ。

人気の少ない渡り廊下まで来たところで、ようやく鳳城くんが足を止める。

夕方の光が、窓から斜めに差しこんでいた。
こんな学園の廊下や図書まわりの静かな空気は、学校施設の紹介でもよく見られるような、落ち着いた雰囲気を思わせる。
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