エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
そんなある日。
学園中が朝からいつも以上に浮き足立っていた。

今日は、年に一度の学院記念パーティー。
生徒も保護者も招かれる、名門らしい華やかな行事だ。

もちろん私は、こういう場にはまったく慣れていない。
朝からずっとそわそわしていた。

「結城さん、そのリボンすごく似合ってる」

更衣室でクラスメイトにそう言われて、私は鏡の前で小さく肩をすくめた。

「そ、そうかな……」

今日は制服ではなく、学園指定のパーティー用ワンピース。
やわらかなクリーム色の生地に、胸元と裾へ繊細なレースが入っている。
派手ではないけれど、普段よりずっと大人っぽく見えてしまって落ち着かない。

髪も少しだけ巻いてもらったせいで、鏡に映る自分が自分じゃないみたいだった。

「絶対かわいいよ」
「鳳城さま、びっくりするんじゃない?」

その名前が出た瞬間、心臓がどきっと跳ねる。

「えっ、なんでそこで鳳城くん……!」

「だって最近、すごく結城さんのこと気にしてるじゃん」

「そうそう。今日も絶対エスコートしそう」

そんなことあるわけないのに。
そう思うのに、胸の奥が妙にそわつく。

やがて会場の大広間に入ると、私は思わず息をのんだ。

高い天井。
きらびやかなシャンデリア。
生花で飾られたテーブル。
窓の外には、夕暮れに染まる庭園まで見える。

まるで別世界みたいだった。
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