エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「すごい……」

こんなところ、本当に同じ学校なのかな。
圧倒されながら立ち尽くしていると、後ろからひそひそ声が聞こえてきた。

「結城さん?」
「今日、雰囲気違う……」
「え、かわいくない?」

その視線に気づいて、私はますます縮こまる。
こんなふうに注目されるのは、どうしても慣れない。

そのときだった。

会場の入口近くが、急にざわめく。

空気が変わった気がしてそちらを見ると、そこには鳳城くんがいた。

黒を基調にしたフォーマルな装い。
制服のときよりずっと大人びて見えて、いつもの金髪までひどく映える。

一瞬で、まわりの視線が全部そちらへ集まる。
やっぱりこの人は、どこにいても主役みたいだ。

……なのに。

鳳城くんの目は、まっすぐ私をとらえていた。

その視線が合った瞬間、時間が止まったみたいになる。

ゆっくりと近づいてくる足音。
逃げたいのに、逃げられない。

やがて私の目の前で足を止めた鳳城くんは、しばらく何も言わなかった。

「……鳳城くん?」

おそるおそる名前を呼ぶと、彼は少しだけ眉を寄せる。

「反則」

「えっ?」

意味がわからなくて瞬きをすると、鳳城くんは小さく息をついた。

「そんな格好してるって聞いてない」

顔が一気に熱くなる。

「そ、そんな格好って……学園の指定だよ?」

「知ってる」

「じゃあどうして……」

聞き返しかけた私の髪に、鳳城くんの指先がそっと触れた。
耳の横で揺れていた髪を、やさしく整えるみたいに。

「かわいすぎる」

そのひと言で、思考が真っ白になる。

「……っ」

何も言えない。
だってそんなふうに、真正面から言われるなんて思っていなかったから。

「顔、真っ赤」

「鳳城くんのせい……!」

「知ってる」

意地悪く笑うくせに、目だけは甘い。
もう本当にずるい。
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