エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
そのとき、会場の反対側から誰かが私を呼んだ。

「結城さん」

振り返ると、そこにいたのは中野先輩だった。
今日は淡いグレーのジャケット姿で、いつもより少し大人っぽい。

「中野先輩」

「よかった、見つけた。さっき図書委員の先生が、写真撮影のとき人数確認したいって探してたよ」

「あ、そうなんですね。ありがとうございます」

私がそう返した瞬間。
隣の空気がすっと冷えた。

見なくてもわかる。
鳳城くんだ。

「ふーん」

低い声に、私はそっと横目で彼を見る。
案の定、ものすごく不機嫌そうだった。

中野先輩は苦笑する。

「鳳城、またそんな顔してる」

「してない」

「してるよ」

完全にしてる。
でも私は怖くて口に出せない。

「じゃあ結城さん、先生のところ――」

中野先輩が言いかけた、その瞬間だった。

鳳城くんが、私の手首を軽くつかむ。

「行かせない」

「えっ」

「写真ならあとでいいだろ」

「でも先生が……」

「俺が言っとく」

あまりに自然に引き寄せられて、私は目を白黒させる。
中野先輩はさすがに少し驚いたあと、困ったように笑った。

「鳳城、独占欲強すぎ」

「うるさい」

「結城さん、困ってるよ」

その言葉に、鳳城くんは私を見る。
金色の瞳が、少しだけ不安そうに揺れた気がした。

「……困ってる?」

そんなふうに聞かれてしまうと、弱い。

私は小さく首を振った。

「こ、困ってはないけど……」

言った瞬間、鳳城くんの目元が少しだけゆるむ。
中野先輩が、ああもうという顔で肩をすくめた。

「はいはい。じゃあ俺は消えるよ」

「すみません、中野先輩……!」

「気にしなくていいよ。また今度」

そう言って離れていく背中を見送りながら、私はまだ熱い頬を押さえたくなる。
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