エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「今、それ言う?」

「え……」

「これ以上あおるなよ」

意味がわからずに瞬く私の頬へ、鳳城くんの手がそっと触れる。
指先はやさしいのに、ひどく熱い。

「そんなこと言われたら、離したくなくなる」

月の光の下。
金色の瞳がまっすぐ私を映している。

好き。
きっともう、とっくにそうだった。

でも、その一言だけはまだ口にできない。
たぶん彼も、同じだ。

それでも今は、それでいい。
言葉にしなくても、確かに近づいているのがわかるから。

鳳城くんは私の髪をそっと撫でてから、小さく笑った。

「戻るぞ」

「うん」

立ち上がった瞬間、彼の指が私の指先に触れる。
そのまま自然に絡め取られて、私は息をのんだ。

「……鳳城くん」

「嫌なら離す」

そう言いながら、少しも離す気なんてなさそうだった。

私は小さく首を振る。

「嫌じゃない」

その答えに、鳳城くんの口元が満足そうにゆるむ。

会場へ戻るまでの短い道。
月明かりの下でつないだ手は、思ったよりずっとあたたかかった。

そして私はまだ知らない。
この夜のあと、鳳城くんをめぐる大きな噂が、また私たちを揺らすことになるなんて。
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