エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
でも、聞けない。
聞いたら、本当に遠くなってしまいそうでこわかった。

「ほのか」

低く名前を呼ばれる。
それだけで胸が痛くなる。

「……あとで話す」

やっとそれだけ言うと、鳳城くんは少しだけ目を細めた。
何か言いたそうだったけれど、ちょうど始業の鐘が鳴って、会話はそこで終わった。

その日の授業は、ほとんど頭に入らなかった。

放課後になっても、気持ちは晴れない。
それどころか、昼休みに女子たちの話す声を聞いてしまって、余計に苦しくなった。

「鳳城さまって、もう将来決まってるんでしょ?」
「海外の名門校に行くかもって聞いた」
「じゃあ学園で誰と仲良くしても、結局は別世界だよね」

別世界。
その言葉が、何度も胸を刺した。

放課後の帰り支度をしていると、机の横に影が落ちる。

「来い」

短いその一言だけで、誰かわかる。
私はゆっくり顔を上げた。

「鳳城くん……」

「あとで話すって言ったのおまえだろ」

逃げられない。
そう思って、私は小さくうなずいた。

連れていかれたのは、あの生徒会の休憩室だった。
夕方の光がやわらかく差しこむ、二人だけの特別な場所。

扉が閉まる音が、やけに大きく響く。

鳳城くんは机の前まで行くと、振り返って私を見た。

「で」

短いひと言。
でも、その先を全部言わせる圧がある。

私はぎゅっと制服のスカートを握りしめた。

「……記事、見たの」
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