エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
そのことが、ほんの少しだけ寂しい。

「今日は帰れ」

「う、うん」

私は小さくうなずく。
でもその瞬間、鳳城くんの手がふいに私の指先へ触れた。

ほんの一瞬。
執事さんには見えない角度で、そっと。

「また明日」

その声は、さっきまでの彼のままだった。

私は胸がきゅっとなるのを感じながら、こくんとうなずく。

「……うん。また明日」

部屋を出ていく背中は、やっぱり遠い世界の人みたいだった。
でも最後に触れた指先の熱だけは、ちゃんと近かった。

遠い。
なのに、近い。

鳳城カイルという人は、やっぱりずるい。

そして私はまだ知らない。
このあと本当に、彼の家からの圧力が、私たちの関係を大きく揺らし始めることを。
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